宿泊業に使える補助金を徹底解説 ― 中小企業省力化投資補助金・小規模事業者持続化補助金・観光庁の補助金まで網羅

【2025年10月5日作成】

ホテル・旅館・民泊など、宿泊業の現場では 人手不足への対応、業務のデジタル化が常に課題です。 本稿では、その解決に資する中小企業省力化投資補助金(カタログ型)(一般型)/小規模事業者持続化補助金/IT導入補助金/観光地・観光産業における人材不足対策事業の5つの補助金を 、銀行出身の行政書士が分かりやすくご紹介します。

宿泊業に活用可能な補助金を行政書士が解説!

宿泊業で活用可能な補助金:中小企業省力化投資補助金(カタログ注文型)

民泊やホテル等の宿泊業で活用可能な補助金の1つ目は、中小企業省力化投資補助金のカタログ注文型です。中小企業等が抱える人手不足の課題に対応するため、IoTやロボットなど、省力化に効果のある汎用製品の導入が補助されます。 これにより、簡易かつ即効性のある省力化投資を促進し、企業の付加価値や生産性の向上を図るとともに、賃上げの実現にもつなげることを目的としています。 補助対象となる製品は予め登録されたカタログから選定し、最大1,500万円の補助が受けられます。

宿泊業に活用可能な補助金:中小企業省力化投資補助金_カタログ注文型
スケジュール

他の補助金のように公募回はなく、本補助金の申請は通年で随時受け付けられています。採択・交付決定は申請から概ね1~2ヶ月程度で、補助事業期間(補助対象となる投資を実際に実施する期間)は原則、交付決定日から12か月以内です。

補助上限・補助率
従業員数補助上限額賃上げ要件を満たした場合補助率※
5名以下200万円300万円1/2 以下
6~20名500万円750万円
21名以上1,000万円1,500万円
宿泊業向けカタログ掲載の主な製品

自動チェックイン機や清掃ロボットがカタログに掲載されています。

製品カテゴリー登録製品数
清掃ロボット10件
配膳ロボット3件
自動チェックイン機10件
入出金機1件

宿泊業で活用可能な補助金:中小企業省力化投資補助金(一般型)

宿泊業で活用可能な補助金の2点目は中小企業省力化投資補助金の一般型です。補助金の目的はカタログ型と同様で、 省力化投資を促進し、企業の付加価値や生産性の向上を図るとともに、賃上げの実現にもつなげることが目的とされています。 大きく異なる店は、対象となる設備はカタログ型のように予め決まっていない点、スケジュールは随時受け付けでなく公募回ごとに分かれる点、また補助額も異なる点が特徴です。

宿泊業にも:中小企業省力化投資補助金_一般型
スケジュール

2025年の「一般型」の 公募は年3~4回が予定されています。2025年については次の通りです(2025年10月4日現在)。

公募回公募開始日申請受付開始日公募締切日採択発表日
第1回2025年1月30日2025年3月19日2025年3月31日2025年6月16日
第2回2025年4月15日2025年4月25日2025年5月30日2025年8月8日
第3回2025年6月27日2025年8月4日2025年8月29日2025年11月下旬(予定)
第4回2025年9月19日2025年11月上旬(予定)2025年11月下旬(予定)後日お知らせ
補助上限・補助率

中小企業省力化投資補助金(一般型)の補助率と補助上限額は以下のとおりです。

従業員数補助率※補助上限額大幅な賃上げを行う場合の上限額
5名以下中小企業:1/2
(特例時 2/3)
小規模・再生事業者:2/3
750万円1,000万円
6~20名1,500万円2,000万円
21~50名3,000万円4,000万円
51~100名5,000万円6,500万円
101名以上8,000万円1億円
宿泊業向けの補助対象経費

中小企業省力化投資補助金(一般型)は、オーダーメイドの設備やシステム導入にも使える補助金です。対象経費は、機械装置・システム構築費、技術導入費、外注費などが含まれます。 下記は公表事例のうち宿泊業に関する採択例です。 宿泊業では、宿泊管理システム、自動チェックイン機、ICカードロックなどの導入で採択されています。

宿泊業に活用可能な補助金:中小企業省力化投資補助金_一般型_採択事例

中小企業省力化投資補助金(一般型)については、下記の私の記事で詳しく解説していますので、参考になさってみてください。

2025年 中小企業省力化投資補助金(一般型)第4回公募 - 申請の要件、対象経費、スケジュール

宿泊業で活用可能な補助金:小規模事業者持続化補助金

民泊やホテル等の宿泊業で活用可能な補助金の3つ目は小規模事業者持続化補助金です。 小規模事業者持続化補助金は、地域を支える小規模事業者の販路開拓や業務効率化の取り組みに対して、その経費の一部を補助する制度です。 販路開拓の取組が重視されている点が特徴で、中小企業省力化投資補助金と異なり、機械装置費以外にも、広報費(商品やサービスの宣伝を目的とする印刷物や広告の費用)やWebサイト関連費が対象経費になり、対象経費の幅が広い点が大きな特徴です。 広報費や宿泊業にも活用可能です。

本補助金は、中小企業のうち「小規模事業者」に該当する事業者が対象となります。 なお、宿泊業の場合は、常時使用する従業員数が20人以下であることが要件となっています。

第17回公募での主な採択事例

下記は、実際の2025年の第17回公募での民泊やホテル等の採択事例の一部です。小規模事業者持続化補助金では、民泊やホテルの採択事例は豊富です。

  1. 地域密着型宿泊施設のリノベーション・広報事業
  2. インバウンド向け1棟貸し宿泊施設の整備事業
  3. 空き家をインバウンド向け宿泊施設へ改装!写真や動画で販路拡大
  4. 自然民泊×サウナ体験による宿泊価値向上事業
  5. 高温サウナの導入によるサウナ好き宿泊客の取り込み
  6. 横須賀の地域資源を活用した訪日外国人向け宿泊施設整備事業
  7. 高級ホテル宿泊者向けフェムケア・水素吸入事業の販路開拓
  8. 宿泊施設の高付加価値化と自社宿泊予約システムの構築
スケジュール

2025年は春(第17回公募)と秋(第18回公募)の年2回、公募が実施されました。 第18回公募では、申請受付の開始から締切まではおおよそ2か月間、締切から採択結果の発表までは約2か月強の期間が設けられています。 採択後の補助事業の実施期間(事業計画の実行期間)は、最長で1年間となっています。

宿泊業に活用可能な補助金:小規模事業者持続化補助金のスケジュール
補助上限・補助率

小規模事業者持続化補助金<一般型 通常枠>の補助上限額と補助率は次の通りです。

項目内容
補助率2/3(賃金引上げ特例のうち赤字事業者は 3/4)
補助上限額50万円
補助上限額(インボイス特例)+50万円:100万円
補助上限額(賃金引上げ特例)+150万円:200万円
補助上限額(両特例を満たす場合)+200万円:250万円

中小企業省力化投資補助金(一般型)については、下記の私の記事で詳しく解説していますので、参考になさってみてください。

2025年 中小企業省力化投資補助金(一般型)第4回公募 - 申請の要件、対象経費、スケジュール

宿泊業で活用可能な補助金:IT導入補助金

IT導入補助金は、企業が新たにソフトウェアやクラウドサービスなどのITツールを導入する際、その費用の一部を国や関連機関が支援する制度です。 本制度の目的は、業務の効率化や働き方改革の推進を通じて、企業の生産性向上を図ることにあります。 中小企業省力化投資補助金(カタログ型)と同様に、IT導入補助金も、事前に登録されたITツールの中から対象製品を選び、申請を行います。 宿泊業に特化したソフトウェアの登録数は多くはありませんが、マネーフォワードやfreeeといった会計ソフト、Larkのような汎用的な業務支援ツールは豊富に登録されており、宿泊業の方にも幅広く活用いただけます。

宿泊業に活用可能な補助金:IT導入補助金
スケジュール

毎年5月を初回として、12月まで6-7回の公募が実施されています。ただし、12月に近い申請は予算の消化の状況によっては実施されない年もあることが今後想定され、早めの申請をお勧めします。 下記は2025年の初回から第3回公募までのスケジュールです。

項目1次締切分2次締切分3次締切分
締切日2025年5月12日(月)2025年6月16日(月)2025年7月18日(金)
交付決定日2025年6月18日(水)2025年7月24日(木)2025年9月2日(火)
事業実施期間交付決定~
2025年12月26日(金)
交付決定~
2026年1月30日(金)
交付決定~
2026年2月27日(金)
実績報告期限2025年12月26日(金)2026年1月30日(金)2026年2月27日(金)
補助上限・補助率

IT導入補助金の補助上限と補助率は次の通りです。会計ソフトウェアであれば、通常は1~2プロセスですので補助上限は150万円です。 月額課金の場合は最大で2年分まで補助が出ます。

補助額機能要件補助率
通常枠5万円~150万円未満1プロセス以上1/2以内
(賃上げ要件充足で2/3以内)
150万円~450万円以下4プロセス以上
インボイス枠
(ITツール)
~50万円部分会計・受発注・決済のうち1機能以上3/4以内
※小規模事業者は4/5以内
内50万円超~350万円部分会計・受発注・決済のうち2機能以上2/3以内

IT導入補助金については、下記の私の記事で詳しく解説していますので、参考になさってみてください。

IT導入補助金(通常枠)の公募要領 - 主要ポイントと申請の流れを徹底解説

宿泊業で活用可能な補助金:観光地・観光産業における人材不足対策事業ー観光庁

本補助金は、今後増加が見込まれる観光需要を確実に取り込み、旅行者数や旅行消費額の拡大を通じて観光立国の実現を目指すため、宿泊業の人手不足解消に資する設備投資の費用の一部を支援し、サービス水準の向上と賃上げの達成を促すものです。 対象は旅館業法第3条第1項の許可を受けた宿泊事業者に限られ、住宅宿泊事業法に基づく民泊事業者は対象外となります(宿泊施設の要件は公募要領に詳細に記載されています)。 公募は、原則として年に1回しかございません。

宿泊業に活用可能な補助金:観光地・観光産業における人材不足対策事業
スケジュール

下記は、2025年のスケジュールです。2026年以降に公募が実施される場合は、同様のスケジュールとなりそうです。

事業計画の申請

令和7年3月24日(月)〜5月30日(金)

マイページ上から事業計画を申請します。

採択結果の通知

令和7年7月18日(金)

事務局による審査を経て、採択結果が通知されます。

補助事業の実施

採択に続く交付申請と交付決定後、補助対象となる事業(契約・納品・支払等)を実施します。

完了実績報告

令和8年1月9日(木)締切

補助事業の完了後、実績報告を提出します。

補助上限・補助率

補助上限は1施設当たり500万円、補助率は1/2です。事業者あたり最大3施設まで申請できますので、3施設で申請する場合は上限1,500万円になります。

補助対象経費

補助対象経費は、公募要領の別紙1に記載されたシステムを導入する場合と、それ以外のシステムを導入する場合とに分かれます。 公募要領の別紙1に記載されたシステムを導入する場合は、事業計画書の記載内容が簡易となり、申請理由の記載は不要です。 以下は、2025年公募において対象となったシステム・設備の一部です(紙面の都合により省略していますが、公募要領にはメーカー名まで記載されています)。

自動チェックイン機、スマートロック・カードロック、施設内情報表示システム、翻訳・通訳システム、POSレジ、電子宿帳システム、キャッシュレス決済端末、PMS(ホテル管理システム)、PMS(ホテル管理システム)オプション、宿泊予約システム、サイトコントローラー、チャットボット、SMS送信サービス、レベニューマネジメント、会計ソフト、清掃ロボット、コンドルポリシャー(床洗浄機)、清掃管理システム、オゾン脱臭機、インカム・無線通信機、監視カメラ、温度管理システム、ビジネス電話システム、混雑状況可視化システム、労務管理システム、在庫管理システム、スチームコンベクション オーブン、オーダーシステム、冷凍庫、真空包装機、配膳ロボット、小荷物専用昇降機

まとめ

補助金の申請では、要件に沿いつつ、各補助金の制度の目的や要件も考慮した事業計画を策定することが重要です。 筆者は、銀行および投資銀行での勤務経験を持つ行政書士として、一貫性のある財務データに裏付けられたストーリー性のある事業計画の作成を得意としています。

また、当事務所では、当事務代表と同様に知識と経験が豊富な提携先の行政書士と共同で、単独受任時と変わらない報酬体系での支援も行っています(なないろバックオフィス)。 小規模事業者持続化補助金の支援実績も豊富です。2025年の直近の公募(第17回)でも採択実績がございます。

とくに「初めてで不安」、「申請書をうまく作れない」と感じている方は、お気軽にご相談ください。 LINE・フォーム・お電話から、初回無料でご相談いただけます。安心・確実な申請をご支援いたします。

提携先:行政書士藤原七海事務所

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Yohei Komori

行政書士
基本情報技術者
J.S.A. ワインエキスパート
古森洋平 Yohei Komori

080-6521-1647

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参考法令・資料

  1. 独立行政法人中小企業基盤整備機構 中小企業省力化投資補助金公式サイト
  2. 2025年 中小企業省力化投資補助金(一般型) 公募要領
  3. よくあるご質問(一般型)