ものづくり補助金の第20次公募要領 ― 要件、対象の経費、申請のポイントを解説
【2025年6月5日更新】
中小企業が、新たな製品・サービス開発や海外市場進出に取り組むため、国は「ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金」を実施しています。 ものづくり補助金では、企業の成長や賃上げ、付加価値向上を狙った事業計画に対して、必要な設備投資やシステム構築の経費の一部が補助されます。本稿では、補助金の目的、申請スケジュール、支援内容、基本要件や特例措置など、主要なポイントを、銀行と投資銀行に勤務経験のある行政書士の古森(こもり)が解説します。
なお、2025年は既に終わった19次を含めて、20次、21次、22次まで、全4回のものづくり補助金の公募があると公表されており(6月5日説明会にて)、チャンスが多いです。本稿をご覧になり要件にあてはまる方は、是非チャレンジしてみてください。

補助金の目的と支援対象
本補助金は、物価高騰や人件費上昇、最低賃金引上げなど厳しい経営環境に直面する中小企業が、持続的な成長戦略の一環として新製品や新サービスの開発、さらには海外市場開拓に挑戦する際の設備投資を支援するものです。 企業全体の事業計画と連動した取り組みが求められ、具体的には2つの枠があります。本稿では、前者の製品・サービス高付加価値枠について説明します。
- 革新的な新製品・新サービス開発(製品・サービス高付加価値枠):この補助金は、革新的な新製品・新サービスの開発に必要な設備やシステム投資を支援するものです。「高付加価値化枠」では、既存製品の生産工程の改善や効率化は対象外となります。 対象となるのは、自社の技術を活かして、新たな価値を顧客に提供する取組です。単なる設備導入のみで、開発を伴わない事業は補助対象になりません。また、すでに他社で広く使われている製品・サービスの開発も対象外です。
- 海外需要の開拓(グローバル枠): 輸出やインバウンド対応、海外企業との連携などの海外事業を実施し、国内の生産性を高める取り組みに必要な設備・システム投資等を支援する枠組みです。
申請スケジュールと申請書類
補助金の申請は、電子申請システムを利用して行われます。申請にあたっては、事前に「GビズIDプライム」アカウントの準備が必要となります。第20次公募のスケジュールの概要は以下の通りです。
- 公募開始: 2025年4月25日(金)
- 電子申請受付開始: 2025年7月1日(火)17:00~
- 申請締切: 2025年7月25日(金)17:00【厳守】
- 採択公表: 2025年10月下旬頃
また、申請書類としては事業計画書、経費明細、加点項目に関する資料、決算書など多数の書類が求められるため、事前の準備と各種支援機関の活用が推奨されます。

注意
・採択前はもちろん、交付決定日よりも前に発注・契約・購入を行った経費は補助対象外となってしまいます。交付決定前に可能なことは、見積りだけです。
・採択と交付申請は別の審査なので注意してください。経費が、補助対象であるか否かは、交付申請時により厳格に審査されます。
補助の上限額と補助率
ものづくり補助金(うち、製品・サービス高付加価値化枠)の補助上限額は従業員数によって異なり次の通りです。
補助率は中小企業は1/2、小規模企業・小規模事業者及び再生事業者は2/3です。
従業員規模 | 補助上限額 |
---|---|
5人以下 | 750万円 |
6〜20人 | 1,000万円 |
21〜50人 | 1,500万円 |
51人以上 | 2,500万円 |
大幅な賃上げ(年平均成長率6%以上他)に取り組む場合は、補助上限額が100~1,000万円上乗せされます。 また、詳細な条件の説明は割愛しますが、最低賃金の引き上げに取り組む場合は、補助率が2/3に引き上げられます。
ものづくり補助金の4要件
補助金の採択には、下記の4つの要件をクリアする必要があります。
- 付加価値額の増加: 事業計画期間(3~5年)において、企業の付加価値額を年平均3.0%以上増加させる目標が求められます。具体的には「営業利益+人件費+減価償却費」により算出される付加価値額が対象です。
- 賃金の増加: 従業員及び役員の給与支給総額が、年平均2.0%以上(または地域の最低賃金の成長率を上回る)増加することが求められます。個々の目標値を定め、未達成の場合は補助金の一部返還措置が取られるため、実現可能な計画の策定が不可欠です。
- 事業所内最低賃金の引上げ: 事業実施地域の最低賃金に対し、+30円以上の引上げが必要とされています。こちらも毎年の達成状況がチェックされ、未達成の場合は返還の対象となる場合があります。
- 従業員の仕事と子育ての両立支援: 従業員が21名以上の場合、次世代育成支援策として、一般事業主行動計画の策定と公表が求められます。これは企業としての働きやすさ向上や、長期的な人材育成にも寄与する取り組みです。
4つめの「従業員の仕事と子育ての両立支援」の条件は従業員が20人以下の場合は満たす必要がありませn。また、グローバル枠の場合は、上記基本要件に加えて、海外市場への取り組みや実現可能性調査、専門人材の確保といった追加要件が課せられます。
付加価値の考え方
付加価値は「営業利益+人件費+減価償却費」です。このうち、減価償却費と人件費は比較的予想が立てやすいです。営業利益を3年後(5年後)にしっかり上げることが、ものづくり補助金の要件の中では最大のポイントです。
補助対象経費
補助対象経費は、以下のような項目が含まれます。ものづくり補助金である以上、機械装置・システム構築費への投資は不可欠です。
- 機械装置・システム構築費: ものづくり補助金では、機械装置・システム構築費として、工具・ソフトウェア・設置工事などの設備投資が補助対象となります。原則として、補助事業専用であること、かつ単価50万円(税抜)以上が必要条件です。導入に伴う改良・据付費用も一定条件下で認められます。
- 運搬費: 運搬料、宅配・郵送料等に要する経費です。 購入時の機械装置の運搬料については、「機械装置・システム構築費」に含めます。
- 技術導入費: 本事業の実施に必要な知的財産権等の導入に要する経費です。知的財産権を所有する他者から取得することも可能ですが、その場合は書面による契約の締結が必要です。 上限額は補助対象経費総額(税抜き)の3分の1です。
- 外注費: 新製品・新サービスの開発に必要な加工や設計(デザイン)・検査等の一部を外注(請負、委託等)する場合の経費です。 上限額は補助対象経費総額(税抜き)の 2分の1です。
- その他:専門家経費、クラウドサービス利用費、原材料費(試作品の開発に必要な原材料費に限る)などが補助対象経費です。
特例措置と返還ルール
大幅な賃上げに取り組む企業に対しては、特例措置として補助上限額の引上げ(最大1,000万円増額)や、最低賃金引上げに対する補助率の引上げ(1/2から2/3へ)が認められます。しかし、目標値未達成の場合には、上乗せ分の返還や一定の割合での返還措置が適用されるため、目標達成に向けた具体的な計画策定と、各年ごとの進捗管理が求められます。
審査項目
審査では、事業の内容や実現性、社会的な意義などが多角的に評価されます。以下は主な審査項目です。
- 補助事業の適格性:
公募要領の条件(対象者、対象事業、要件など)に合致しているか - 経営力:
事業の目的や戦略が明確で、市場分析や自社の強みを活かした計画になっているか - 事業性:
高付加価値や賃上げなどの効果が期待できるか。顧客ニーズ、競合との差別化、成長市場への適合性があるか - 実現可能性:
必要な技術力・体制・資金を有しており、スケジュールや費用対効果が現実的か - 政策面:
地域経済への波及効果や、デジタル・環境分野等の政策目標と合致しているか。地域連携や事業承継、先進技術の活用も評価対象 - 大幅賃上げの妥当性(該当者のみ):
賃上げ計画が具体的かつ持続可能で、人材育成や組織強化にも取り組んでいるか
上記の審査項目は、すべて提出する事業計画書を通じて評価されます。 そのため、「何を」、「なぜ」、「どうやって」実現するのかを、わかりやすく、説得力を持って説明することが非常に重要です。 単にやりたいことを並べるのではなく、根拠のあるデータや市場分析、実現可能性の高いスケジュールや体制などをしっかりと盛り込んで、審査員に訴求する事業計画を作り込みましょう(当事務所では、事業計画書の作成にとくに力を入れています)。 事業計画書については、私の下記の記事も参考になさってみてください。
ものづくり補助金の事業計画書の書き方 - 銀行出身の行政書士が解説!審査項目以外に加点項目が幾つかあります。うち、パートナーシップ構築宣言と、成長加速化マッチングサービスへの登録が容易なのでお勧めです(申請される方は皆さんとりますので、実質必須です)。 さらに加点を狙う場合は、経営革新計画と事業継続力強化計画(BCP計画)認定制度が、比較的認定を受けやすいです。BCP計画については、下記の私の記事で詳しく解説していますので、参考になさってみてください。
事業継続力強化計画(BCP計画)認定制度を行政書士が解説申請書類と事後報告の義務
申請にあたっては、企業情報、事業計画書、経費明細、各種誓約書、決算書、さらには加点に関する証明資料など、多数の書類を提出する必要があります。また、採択後は事業実施期間中に定期的な事業化状況報告(全6回)が求められ、特に設備投資後の実績や最低賃金、給与支給総額の推移について詳細な報告が必要です。これらの報告は、補助金の適正利用や事業計画の達成度を確認するために重要なプロセスとなっています。
まとめ
ものづくり補助金の申請では、4つの要件に沿いつつ、賃金の引き上げなどの立法趣旨も考慮した事業計画を策定することが重要です。筆者は、銀行と投資銀行に勤務経験のある行政書士として依頼者を最大限サポートします。 加えて当事務では、中小企業の皆様により上質なサービスを提供すべく 当事務代表と同等の知識と経験を有する提携先の行政書士とともに、単独受任時と変わらない報酬での共同受任にも応じています。 LINE、問い合わせフォーム、または、お電話にてお気軽にお問い合わせ頂ければ幸いです(相談料は無料です)。
提携先:行政書士藤原七海事務所
参考法令・資料
- ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金-公募要領(第20次公募)
- 全国中小企業団体中央会- ものづくり補助金 - よくある質問
- 参考様式 事業計画書 記載項目(第20次締切分)
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