【2025年】IT導入補助金(通常枠)の公募要領 - 主要ポイントと申請の流れを徹底解説

【2025年4月29日更新】

2025年2月28日に、2025年のIT導入補助金(通常枠)の公募要領が発表されました。 本記事では、補助金の目的や背景、申請条件、対象経費、補助率、補助金上限額、申請の流れについて、 基本情報技術者でも行政書士でもある筆者が詳しく解説いたします。

【2025年】IT導入補助金(通常枠)の公募要領 ― 主要ポイントと申請の流れを徹底解説

IT導入補助金とは?

IT導入補助金は、企業が新しいソフトウェアやクラウドサービス、その他のITツールを導入する際の費用の一部を、国や関連機関が支援する制度です。 目的は、業務効率の向上、働き方改革の推進、そして企業の生産性の向上にあります。

また、IT導入補助金では、補助金の申請者(中小企業等)が自由にITツールを選べる訳ではなく、予めベンダー登録された IT導入支援事業者からツールを選定し、同IT導入支援事業者にも相談しながら、補助金の申請を進める点が大きな特徴です(下記の図を参照)。 なお、本稿では補助金の申請者の立場で補助金を解説します。IT導入支援事業者ベンダー登録の方法は別の記事でまた紹介したいと思います。

IT導入補助金の仕組み

補助金の申請者(中小企業等)の視点から見た、申請までのIT導入支援事業者との連携の流れは下記の図もわかりやすいです(公募要領より抜粋)。

IT導入補助金の交付申請の流れ

誰が対象?

IT導入補助金は、原則として中小企業・小規模事業者(中小企業等)のみが対象であり、大企業は対象外です。 中小企業等の定義は、公募要領に記載がありますが、例えば製造業であれば、 「資本金の額又は出資の総額が3億円以下の会社又は常時使用する従業員の数が300人以下の会社及び個人事業主」が中小企業等に該当します。

補助額と補助率の詳細

IT導入補助金の補助額は、導入予定のITツールを機能別に分類した場合のその機能数(プロセス数)に応じて、 変わります。具体的には下記の通りです。

  • 導入予定のITツールの機能(プロセス)が1種類以上の場合
    5万円~150万円
  • 導入予定のITツールの機能(プロセス)を4種類以上の場合
    150万円~450万円

IT導入補助金も、他の補助金同様に従業員の賃金を上げたいという政策的な意図が背景にあります。従って、下記の通り基本補助率は1/2(50%)ですが、 賃金に関わる要件を満たすと2/3に引きあがります。

  • 基本補助率:1/2
    通常は、補助対象経費の50%が補助されます。
  • 条件を満たす場合:2/3
    「3か月以上、地域別最低賃金+50円以内で雇用している従業員が全従業員の30%以上」である場合、補助率が2/3に引き上げられます。

公募・受付・申請・〆切・採択スケジュール

2025年4月29日現在で判明しているスケジュールは次の通りです。1次、2次、3次の公募分までが発表されています。 2024年の例では、第7次公募までありましたので、2025年についても、公募回が今後増えることが予想されます。

項目1次締切分2次締切分3次締切分
締切日2025年5月12日(月)2025年6月16日(月)2025年7月18日(金)
交付決定日2025年6月18日(水)2025年7月24日(木)2025年9月2日(火)
事業実施期間交付決定~
2025年12月26日(金)
交付決定~
2026年1月30日(金)
交付決定~
2026年2月27日(金)
実績報告期限2025年12月26日(金)2026年1月30日(金)2026年2月27日(金)

これまで判明の公募回に共通のスケジュールとしては、補助事業の実施が約6ヶ月であること、 補助事業の実施期間の最終日が実績報告期限となっていることです。 上記の表には記載がありませんが、どの公募回においても、実績報告の後に、3年間毎年事業計画の「効果報告」をする必要があります。 事業計画については後述します。

申請の流れ

おおまかな申請の流れは次の通りです。

  1. 事前準備
    自社の業務課題を整理し、どのITツールが解決策となるかを検討します。
  2. IT導入支援事業者の選定
    専門家のアドバイスを受けながら、最適なITツールを選び、支援事業者と連携します(連携は上段の図を参照)。
  3. 事業計画、他申請書類の作成と提出
    事業計画のほか、必要な添付書類(法人の場合は履歴事項証明書、納税証明書など、個人事業主の場合は運転免許証や住民票など)を予め準備し、オンラインで申請します。
  4. 審査と交付決定
    提出された申請内容が審査され、条件を満たしていれば補助金が交付されます。
  5. ITツールの導入と実績報告
    補助金を受けた後、実際にITツールを導入し(補助事業の実施期間)、その効果を計3回報告します。

IT導入補助金における事業計画

IT導入補助金においては、3年間の事業計画を作成、実行、報告します。 事業計画では、1年目の労働生産性を3%向上させ、かつ、計画期間3年間の平均値としても3%以上労働生産性を向上させる計画を立てる必要があります(通常枠の場合)。 ただし、過去の一定期間にIT導入補助金を交付決定を受けた事業者の場合は、この比率が4%以上に加重されます。

付加価値額の考え方は、IT導入補助金においても、他の補助金と同様です。 営業利益に人件費及び減価償却費を加算した額です(付加価値額=営業利益+人件費+減価償却費)。人件費と減価償却費の見込みは立てやすいと思いますので、今後3年間、営業利益の安定的な上昇が見込まれることが重要です。

補助金の申請額が150万円以上の場合は、付加価値額の要件に加えて、下記の3つの要件(賃上げ要件)が加重されます。 また、賃上げ要件が未達の場合には、補助金の全部又は一部の返還が求められます。

  1. 事業計画期間において、給与支給総額の年平均成長率を1.5%以上とすること
  2. 事業計画期間において、事業場内最低賃金(事業場内で最も低い賃金)を地域別最低賃金+30円以上の水準にすること
  3. 交付申請を行う時点で、上記の1及び2に基づく賃金引上げ計画を策定し従業員に表明していること

補助対象となるプロセスと経費

前述の通り、ITツールの有するプロセス数に応じて補助額が異なり、補助の対象となるプロセスは大きく3つに分類されます。 共通プロセス、業務特化型・業種固有プロセス(以上併せて業務プロセス)、それに汎用プロセスです。 業務プロセスとは、ソフトウェアが保有する機能を導入することによって、特定の業務の労働生産性が向上するまたは効率化される工程のことです。 一方の汎用プロセスとは、業種・業務に限定されず、業務プロセスと一緒に導入することで更に労働生産性を向上させる専用ソフトウェアを指します。 汎用プロセスは、単独で導入できず、 共通プロセスか業務特化型プロセスと組み合わせる必要があります。

  1. 共通プロセス:
    ITツールの基本機能を提供するプロセスです。例として、以下のような機能があります。
    1. 共P-01 (顧客対応・販売支援):
      CRMシステムや問い合わせ対応システムなど、顧客対応を強化する機能。
    2. 共P-02 (決済・債権債務・資金回収):
      請求書管理や決済システムなど、資金の流れを管理する機能。
    3. 共P-03 (供給・在庫・物流):
      在庫管理や物流管理ツールなど、供給チェーンを効率化する機能。
    4. 共P-04 (会計・財務・経営):
      会計ソフトや財務管理システムなど、経営情報を可視化する機能。
    5. 共P-05 (総務・人事・給与・労務・教育訓練・法務・情報システム):
      人事管理や給与計算システムなど、社内の統合業務をサポートする機能。
  2. 業種特化型プロセス:
    特定の業種に合わせた固有の機能を提供します。例として、 (製造業向けの生産管理システム、飲食業向けの予約・在庫管理システムなど)があります(各業種P-06)。
  3. 汎用プロセス:
    業種に依存せず、幅広い業務で活用できる自動化や分析ツールを提供します。例として、 (BIツール、データ分析ツール、RPAなど)があります(汎P-07)。

補助対象経費

補助対象経費は、IT導入支援事業者が提供する、あらかじめ事務局に登録されたITツールの導入費用のみが対象です。 登録されているツールのうち、通常枠の場合は、ソフトウェア購入費、クラウド利用費(クラウド利用料最大2年分)、導入関連費が補助の対象経費です。

まとめ

IT導入補助金は、中小企業等の生産性向上と業務効率化に取り組む絶好のチャンスです。 筆者は、基本情報技術者資格も有する行政書士として、皆様が安心・確実に申請できるよう相談に応じています。 ベンダー登録を希望されるIT事業者様の相談も大歓迎です(本稿下段の関連記事を参照)。加えて当事務では、IT事業者様により上質なサービスを提供すべく 提携先の応用情報技術者を有する行政書士とともに、単独受任時と変わらない報酬での共同受任にも応じています。 LINE、問い合わせフォーム、または、お電話にてお気軽にお問い合わせ頂ければ幸いです。

提携先:行政書士藤原七海事務所

参考法令・資料

  1. 2025年 IT導入補助金(通常枠)公募要領

本稿の筆者

Yohei Komori

行政書士
基本情報技術者
J.S.A. ワインエキスパート
古森洋平 Yohei Komori

080-6521-1647

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