IT導入補助金におけるベンダー登録の条件 - 行政書士が解説!

【2025年8月31日更新】
IT導入補助金の「IT導入支援事業者(ベンダー)」には、誰でも登録できるわけではなく、いくつかの条件(要件)を満たす必要があります。本記事では、ベンダー登録を検討しているIT事業者の方向けに、登録の条件やそれをクリアするためのポイントについて、基本情報技術者でもあり行政書士でもある筆者が詳しく解説します。 なお、当事務所と提携先の行政書士藤原七海事務所(あわせて「なないろバックオフィス」)では、freee、マネーフォワード、kintoneといった大手ソフトウェアの代理店としての登録支援に加え、自社開発ツールのベンダー登録実績も多数あり、2025年だけで20件近くの登録支援と採択の実績があります。

ベンダー登録の条件 - 基本情報技術者資格を有する行政書士が解説

ベンダー登録の条件1 - 法人であること

IT導入支援事業者(ベンダー)として登録できるのは「法人」に限られており、個人や外国法人は対象外です。登録には、国内に本社があり、国内で実際に事業を行っていることが必要です。仮登録の際には法人番号の入力が求められ、本登録時には「履歴事項全部証明書(登記簿謄本)」と「法人税の納税証明書(税務署発行)」の提出が必要です。 ただし、個人事業主であっても、中核となる法人があるコンソーシアムの構成員としてであれば登録可能です。

ベンダー登録における仮登録の条件

ベンダー登録の条件2 - 安定的な事業基盤

2つ目の要件は「安定的な事業基盤を有していること」です。IT導入支援事業者には、ITツールを販売するだけでなく、補助事業者に対する申請サポートや事業完了後の報告支援など、アフターサポートの提供も義務付けられており、事務局としては短期間で倒産してしまうような事業者には登録を認められません。 「安定的な事業基盤を有していること」という表現は「IT導入支援事業者登録要領」にもそのまま記載されていますが、この文言だけでは具体的に何を満たせばよいのか分かりにくいため、実際には全体の記載内容や提出資料から、以下のような条件が求められていると推測されます。

法人を設立して1期以上経過していること

「通常枠」でも、「インボイス枠」でも 申請画面では、法人の売上高と経常利益を少なくとも1期分(原則2期分)記載することが求められるほか、添付書類としては、前述の法人税の納税証明書が必要です。 設立して1期を経過していない新設法人ではベンダー登録はできません。

ベンダー登録_法人決算

今後、中期的に事業を継続できること

この条件は、公募要領には明示されておりません。ただ、ITツールを導入する補助事業者の事業の報告期間が3年間であることと、 その報告のサポートをする義務をIT導入支援事業者が負っていることを勘案すると、IT導入補助金の事務局としては、少なくとも3年かそれ以上の中期に亘り、IT導入支援事業者には事業を継続してもらう必要があると、考えている可能性が高いです(審査の目線)。 法人税の納税証明書の提出に加えて、売上、経常利益、借入金を申告させるのもそのためです。

ベンダー登録を検討されている事業者様から「売上高が大きい方が有利ですか?」というご質問をよくいただきますが、公募要領には売上高や利益に関する具体的な基準は記載されていません。そのため、事業規模の大小よりも「安定的な事業基盤がある」と判断されることの方が重要だと考えられます。例えば、売上高が100億円あっても経常利益が20億円の赤字であれば評価は難しく、逆に売上高5,000万円でも経常利益が3,000万円の企業であれば、安定した基盤があると判断されやすいでしょう。 実際、当方(なないろバックオフィス)では、代表者1名の小規模法人から社員数十名規模の中小企業まで、さまざまな事業者様の登録を支援してきた実績があります。

ベンダー登録の条件3 - ITツールの販売実績

ベンダー登録では、IT導入支援事業者としての登録申請とあわせて、1つ目のITツールの登録申請を同時に行う必要があります。つまり、事業者登録とITツール登録はセットで審査され、どちらか一方だけが採択されることはなく、両方が同時に採択または不採択となります(なお、2つ目以降のITツールは単独で申請可能です)。このことから、1つ目として申請するITツールがIT導入補助金の要件を満たしていること、そしてそのITツールについて、申請者(ベンダー)が実際に販売実績を持っていることが求められていると考えられます。 なお、この点については登録要領でも次のように記載されています。

本事業の要件を満たすソフトウェア、それに類するサービスを提供・販売した実績を有し、ITツールを登録及び提供できること。

出所:2025 IT導入支援事業者登録要領

弥生会計、freee、マネーフォワード、kintone、Larkなどのソフトウェアを扱う代理店(リセラー)としてベンダー登録を行う場合は、登録予定のソフトウェアと同じプランの販売実績があるのが理想です。ただし、完全に同一のプランでなくても、機能や用途が類似していると評価できれば問題ありません。一方で、代理店ではなく、ベンダー自身が開発したソフトウェアなどをITツールとして登録する場合は、当然ながら全く同じ製品の販売実績は存在しないため、それに「類する」サービスの販売実績が求められます。なお、販売実績が何件必要かについては登録要領に明記されていませんが、多いに越したことはなく、審査でも有利に働くと考えられます。実際、弊事務所では数件の実績でも採択されたケースがあります。 販売実績としては、販売先法人の所在地や代表者名の記載が必要であり、場合によっては契約書など、事務局が実績を確認できる証拠書類の提出を求められることもあります。

ベンダー登録の条件4 - 補助事業者の支援体制の構築

この条件については、証拠となる資料の提出は不要で、支援体制を整えていることを誓約する形式になります(チェックボックスにチェックを入れて確認します)。具体的には、以下の内容について誓約することになります。

本事業実施期間のみならず、補助金の交付以降も補助事業者への十分な支援(導入支援、定着支援、活用支援、フォローアップ)を行う体制を整え、補助事業者からの問合せや相談、苦情対応について迅速かつ適切に対応すること。また、導入したITツールのサービスについて、より高度かつ利便性等の向上を実現するための利活用推進に係る取組(ツール等のより高度な利用方法や、利便性を向上させる情報分析の方法等のレクチャー等)を実施すること。

出所:2025 IT導入支援事業者登録要領

ベンダー登録のその他の条件

前述の通り、初回のベンダー登録とツール登録は一体ですので、ベンダー登録の条件を満たしても、登録予定のツールがIT導入補助金に定められた条件を満たしていないと、ベンダー登録も不採択です。 その意味では、ベンダー登録のその他の条件で、最も重要な条件はツールが満たすべき条件になるわけですが、本稿では、法人としてのベンダーが満たすべその他の条件のうち、主なものをご紹介します。 1,2,3につき、補助金は税金を原資に交付されていますので、不正受給や補助金の流用に対しては、厳しく対処されます。立入検査への協力も申請時に誓約することを求められます。

  1. 経済産業省又は中小機構から補助金交付等停止措置又は指名停止措置が講じられていないこと。
  2. 中小機構が実施する補助事業において、「虚偽の申請」や「利害関係者への不当な利益配賦」といった不正な行為を行っていない(加担していない)こと。また、今後も不正な行為を行わない(加担しない)こと。
  3. 事務局及び中小機構は、交付申請や実績報告時において補助事業の適正な遂行のため必要があると認めたときは、交付規程第32条に基づく立入調査等を行う。調査への協力を要請された場合は協力すること。協力しない場合は、交付決定の取消しや補助金返還となることに同意すること。
  4. 本事業の交付規程・公募要領等に記載の内容を遵守すること。また、補助事業者に対し、本事業の交付規程・公募要領等に記載の内容を十分に説明し、理解を得たうえで交付申請を行わせること。
  5. 補助事業者に対し、デジタル化を通じた経営課題解決や生産性向上のための支援に取り組むこと。
ベンダー登録・ITツール登録の関連記事

ベンダー登録・ITツール登録については、下記の私の記事も参考になさってみてください。 とくにベンダー登録・ITツール登録に必要な書類については、上から2番目の記事「IT導入支援事業者登録申請とツール登録のプロセスと方法」で詳しく解説しています。

2025年 IT導入補助金 -ベンダー登録のメリットとデメリットIT導入支援事業者登録申請とツール登録のプロセスと方法ベンダー登録・ITツール登録申請に必要な機能説明資料と価格説明資料の作成方法インボイス枠の要件と審査、ITツール登録の際のインボイス説明資料の作成方法

まとめ

ベンダー登録の条件の判定や、ITツール登録に必要な、「機能説明資料」と「価格説明資料」の作成には、行政庁に対する申請書類の作成を専門とする行政書士としての知見以上に、深いITやシステムに関する知見と経験が必要です。 筆者は、ソフトウェアエンジニア経験が豊富で、かつ、基本情報技術者資格も有する行政書士として、IT事業者が安心・確実に IT支援事業者登録(ベンダー登録)とツール登録をできるよう相談に応じています。

加えて当事務所では、IT事業者様により上質なサービスを提供すべく 提携先の応用情報技術者を有する行政書士である藤原先生とともに、単独受任時と変わらない報酬での共同受任にも応じています (freee会計、マネーフォワード、kintone、M365、Larkなど大手販売代理店の登録に加えて、kintone等をベースしたカスタマイズソフトウェア、それに多数の自社開発ツールの登録実績もあります)。 LINE、問い合わせフォーム、または、お電話にてお気軽にお問い合わせ頂ければ幸いです。

「うちは販売主体で開発していないのだけどベンダー登録可能だろうか?」、「価格設定に悩んでいる」、「自分でやってみたけど何度も事務局から差戻しされて困ってる」――そんな方こそ、ぜひ一度ご相談ください。LINEやお問い合わせフォーム、お電話から、いつでもお気軽にご連絡いただけます(無料です)。安心してお任せいただけるパートナーとして、しっかりとサポートいたします。

提携先:行政書士藤原七海事務所

ベンダー登録の報酬:

マネーフォワードクラウド、freee会計、弥生会計、M365、kintone、Larkの場合:

プラン報酬額(税抜き表示)
IT導入支援事業者登録+ITツール登録
(1ツール分込み)
75,000円
不採択の場合は全額返金

自社開発ツールの場合:

プラン報酬額(税抜き表示)
IT導入支援事業者登録+ITツール登録
(1ツール分込み)
100,000円
※難易度の高いソフトウェア、高額なソフトウェのベンダー登録は別途見積もりをいたします

IT導入補助金の報酬:

プラン報酬額(税抜き表示)
IT導入補助金申請(1件)着手金:30,000円
成功報酬:採択金額の10%

参考法令・資料

  1. IT導入補助金 2025 IT導入支援事業者登録要領
  2. IT導入補助金 2025 インボイス枠(インボイス対応類型)
  3. IT導入補助金 2025 IT導入支援事業者登録の手引き
  4. IT導入補助金 2025 ITツール登録要領
  5. IT導入補助金 2025 ITツール登録の手引き
  6. IT導入補助金 2025 ITツール登録申請にあたっての重点確認事項

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Yohei Komori

行政書士
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