【IT導入補助金】インボイス枠の要件と審査、ITツール登録の際のインボイス説明資料の作成方法を、基本情報技術者資格を有する行政書士が徹底解説!

2025年度(令和7年度)のIT導入補助金では、インボイス制度対応を加速する「インボイス枠(インボイス対応類型・電子取引類型)」が継続・拡充されました。インボイス制度に対応したソフトウェアと一部ハードウェアのみが補助対象であり、通常枠より高い補助率(小規模事業者なら最大4/5)が設定されています。

IT導入支援事業者登録(ベンダー登録)とITツール登録においては、「機能説明資料」と「価格説明資料」の作成が最も重要ですが、インボイス枠での登録を検討しているベンダーにとっては、「インボイス説明資料」も同程度に重要かつ難易度も高いです。 「インボイス説明資料」が不十分で不採択となる事例もございます。 本稿は、主としてインボイス枠でのITツール登録を検討しているIT導入支援事業者の視点から書いていますが、補助事業者(申請者)でもご覧頂ける内容となっており、 以下、インボイス枠の概要、通常枠との違い、インボイス枠のメリット、ITツール登録する際のインボイス枠の要件と審査項目、「インボイス説明資料」の作成方法について、基本情報技術者の資格を有する行政書士である筆者が解説します。

2025年(第9回)躍進的な事業推進のための設備投資支援事業 - 申請の要件、対象経費、スケジュールを行政書士が解説

インボイス枠の概要 - 通常枠との違い

IT導入補助金における通常枠と、インボイス枠の違いは次の表の通りです。 なお、インボイス枠には「電子取引類型」と「インボイス対応類型」の2つがありますが、「電子取引類型」は発注者が受注者に無償でアカウントを発行できることを要するやや要件の限定された受発注ソフトウェアの類型ですので、本稿ではインボイス枠のうち、会計ソフト等でより使いやすい「インボイス対応類型」に焦点をあてて説明いたします。 この表の通り、通常枠よりも、インボイス枠の方が補助率が高く、インボイス制度の普及を後押ししたい政府の政策的な意図が読み取れます。 IT導入支援事業者、補助事業者(申請者)にとっても、同じ会計ソフトでインボイス枠がとれるのであれば、メリットのある話です。

補助額機能要件補助率
通常枠5万円~150万円未満1プロセス以上1/2以内
(賃上げ要件充足で2/3以内)
150万円~450万円以下4プロセス以上
インボイス枠
(ITツール)
~50万円部分会計・受発注・決済のうち1機能以上3/4以内
※小規模事業者は4/5以内
内50万円超~350万円部分会計・受発注・決済のうち2機能以上2/3以内

注:対象経費

  • 通常枠:ソフトウェア購入費、クラウド利用費(最大2年分)、導入関連費
  • インボイス枠(ITツールの場合):ソフトウェア購入費、クラウド利用費(最大2年分)、導入関連費(交付条件あり)
  • インボイス枠(ハードウェア:PC・タブレット等):上限 10 万円、補助率 1/2以内。ソフトウェアと併せて購入するハードウェアのみが対象
  • インボイス枠(ハードウェア:レジ・券売機):上限 20 万円、補助率 1/2以内。インボイス対応レジ・券売機の導入費用が対象

インボイス枠のITツールが有する機能が、会計・受注・決済のうち、1つしかない場合は、補助の上限は50万円です。一方、2つ以上ある場合は補助の上限が350万円に拡大します。 インボイス枠の補助額が例えば200万円で、機能要件が2つ以上ある場合、50万円までは補助率3/4、150万円は補助率2/3になります。

クラウドのソフトウェアは大部分が月額課金(申請上は年契約)ですが、クラウド利用料については最大で2年分補助されます。 ハードウェアであるPC・タブレット等(プリンター・スキャナー・複合機を含む)は、会計・受注・決済のいずれかの機能を有するソフトウェアとあわせて導入し、その利用に資する場合に限り、補助対象です。

ITツール登録・申請のプロセス

「インボイス枠」におけるITツール登録のプロセスは、「通常枠」となんら変わりませんが、 ITツール登録の画面上での記載事項が増える他、「インボイス説明資料」を添付する必要があります。 補助事業者(申請者)の視点でも同様です。IT導入補助金の申請プロセス自体は、通常枠と同じです。

補助事業者(申請者)の視点から見た審査項目

審査項目が異なります。すなわち、「インボイス枠」の場合は、インボイス制度の普及という政策的な背景があるので、補助事業者自身がインボイス制度に対応することが重要な審査項目で、通常枠のように事業計画とITツールの適合性や計画目標値が審査の対象となっておらず、明らかに審査項目が軽いです。 IT導入支援事業者にとっても、補助事業者(申請者)にとっても、審査項目が「通常枠」より軽い点は使いやすいです。

インボイス枠の審査項目 – IT導入補助金2025

審査項目審査事項
事業面からの審査項目
  • 自社がインボイス制度に対応することに加え、生産性向上にもつながる効果的な IT ツールを導入しているか
  • 自社の経営課題を理解し、経営改善に向けた具体的な問題意識を持っているか
政策面からの審査項目
  • 生産性向上及び働き方改革を視野に入れ、国の推進する関連事業に取り組んでいるか
  • 国の推進するセキュリティサービスを選定しているか
  • 「加点項目」の 4) にある賃金引上げに取り組んでいるか

通常枠の審査項目 – IT導入補助金2025

審査項目審査事項
事業面からの審査項目
  • 自社の経営課題を理解し、経営改善に向けた具体的な問題意識を持っているか
  • 自社の状況や課題分析及び将来計画に対し改善すべきプロセスが、導入すべき IT ツールの機能により期待される導入効果とマッチしているか
  • 内部プロセスの高度化、効率化及びデータ連携による社内横断的なデータ共有・分析等を取り入れ、継続的な生産性向上と事業の成長に取り組んでいるか 等
計画目標値の審査
  • 労働生産性の向上率
政策面からの審査項目
  • 生産性向上及び働き方改革を視野に入れ、国の推進する関連事業に取り組んでいるか
  • 国の推進するセキュリティサービスを選定しているか
  • 「加点項目」の 6) にある賃金引上げに取り組んでいるか

インボイス枠でITツール登録する際の要件

本セクション以下は、IT導入支援事業者がベンダー登録・ITツール登録する際の視点で書かれています。補助事業者(申請者)は参考程度にご覧ください。 まず、ITツールが、適格請求書等保存方式(インボイス制度)に対応している場合は、ITツールの登録申請時にその旨を申告した上で、「インボイス説明資料」にて、 そのITツールがインボイスの要件を満たしていることを疎明します。要件は次の通りです。

要件1. 会計・受発注・決済のいずれかの機能を有していること

インボイス制度の性質上、例えば、承認機能や生産管理機能などは直接関係ないため、申請に係るITツールが少なくとも会計・受発注・決済のいずれかの機能を有している必要があります。1つの機能のみを有するか、2つ以上の機能を有するかによって、補助の上限額が異なる点は前述の通りです。 3つの機能の具体的な内容は次の通りです。

  1. 会計機能(共P 04)
    仕訳、各種出納帳、総勘定元帳、試算表、および財務三表(B S・P L・C F)を作成する機能
  2. 受発注機能(共P 02)
    売り手側では売上請求管理・売掛/回収管理・電子記録債権・手形管理等を、買い手側では仕入管理(仕入明細)・買掛/支払管理等を行う機能
  3. 決済機能(共P 02)
    POS レジシステムなどの決済機能や、商品売買に伴う金銭の授受による債権債務管理業務の負担を解消する機能

共Pは共通プロセスの略です。インボイス枠に関わらず、IT導入補助金のITツール(うちソフトウェア)として申請・登録するためには、下記のいずれかのプロセスを有するソフトウェアである必要があります。 インボイス枠のソフトウェアについては、このうち、共P-02と共P-04に対応するソフトウェアが対象で、共P-01、共P-05を含め、それ以外のプロセスで申請・登録はできません。

IT導入補助金_プロセス

要件2. 1の機能がインボイスに対応した仕様となっていること

これも当然と言えば当然なのですが、会計・受発注・決済の機能はインボイスに対応した仕様となっている必要があります。インボイスに対応した仕様とは例えば下記の仕様です。

  1. インボイス対応「会計」機能
    インボイス制度の仕入税額控除要件を満たす帳簿・請求書等を紙または電磁的に保存できるソフトウェア
    記載事項:
    ① 相手方の氏名/名称
    ② 取引年月日
    ③ 取引内容(軽減税率対象品目はその旨を記載)
    ④ 対価の額
  2. インボイス対応「受発注」機能
    適格請求書の発行・写しの保存および電磁的保存が可能なソフトウェア
    記載事項:
    ① 発行事業者の氏名/名称と登録番号
    ② 取引年月日
    ③ 取引内容(軽減税率対象品目はその旨を記載)
    ④ 税率ごとに区分した対価の額(税抜/税込)と適用税率
    ⑤ 消費税額等
    ⑥ 請求書受領事業者の氏名/名称
  3. インボイス対応「決済」機能
    POS レジ等で不特定多数に対し適格簡易請求書(レシート)を交付できるソフトウェア
    記載事項:
    ① 発行事業者の氏名/名称と登録番号
    ② 取引年月日
    ③ 取引内容(軽減税率対象品目はその旨を記載)
    ④ 税率ごとに区分した対価の額(税抜/税込)と適用税率
    ⑤ 消費税額等

ベンダー登録・ITツール登録する際の「インボイス枠」に固有の要件は以上です。他の要件は「通常枠」のソフトウェアと同一です。「通常枠」におけるベンダー登録・ITツール登録については、下記の私の記事を参考になさってみてください。

2025年 IT導入補助金 -ベンダー登録のメリットとデメリットIT導入支援事業者登録申請とツール登録のプロセスと方法ベンダー登録・ITツール登録申請に必要な機能説明資料と価格説明資料の作成方法

インボイス枠のソフトウェアの具体的例

2023年にインボイス制度が導入されて久しく、現在大手の会計ソフトウェアの大部分はインボイス枠で登録されています。 下記は2025年5月現在でITツール登録されている主な会計機能・受発注機能を有するソフトウェアです。 プラン名の記載は省略しています。クラウドは前述の通り、月額料金は比較的安価(申請上は年契約)ですが、最大2年分の補助が出ます。

  1. Freee会計
  2. Freee販売
  3. 弥生会計
  4. 弥生会計Next
  5. Misoca
  6. マネーフォワード クラウド会計
  7. マネーフォワード クラウド経費
  8. マネーフォワード クラウド請求書

インボイス説明資料の作成方法

インボイス説明資料は、申請に係るITツール(ソフトウェア)が前述の要件を満たしていることを説明するための資料です。 「機能説明資料」と「価格説明資料」同様に、pdfにして申請画面に添付します。 ITツール登録要領には「インボイス説明資料には、インボイス対応が確認できる証憑のサンプルを添付してください。」としか書かれておりませんが、機能説明資料や価格説明資料を含めたベンダー登録・ITツール登録全体から整合的に解釈すると、「インボイス説明資料」には次のような記載が求められると解されます。 「機能説明資料」のように、事務局にとってわかりやすい資料を作ることがポイントです。

  1. 各機能ごとに、インボイスへの対応をわかりやすく関連付けること
  2. インボイス枠の要件とインボイス説明資料の記載内容を対応させること
  3. スクリーンショット、証憑の出力サンプルにて、ITツール登録登録申請に係るソフトウェアの各機能が要件を充足していることを確認できること

まとめ

ベンダー登録・ITツール登録に必要な「インボイス説明資料」は、「機能説明資料」と「価格説明資料」同様に、行政庁に対する申請書類の作成を専門とする行政書士としての知見以上に、深いITやシステムに関する知見と経験が必要です。 筆者は、ソフトウェアエンジニア経験が豊富で、かつ、基本情報技術者資格も有する行政書士として、IT事業者が安心・確実に IT支援事業者登録(ベンダー登録)とツール登録をできるよう相談に応じています。 加えて当事務所では、IT事業者様により上質なサービスを提供すべく 提携先の応用情報技術者を有する行政書士とともに、単独受任時と変わらない報酬での共同受任にも応じています(ベンダー登録・ツール登録の採択の実績も豊富です)。 LINE、問い合わせフォーム、または、お電話にてお気軽にお問い合わせ頂ければ幸いです。

提携先:行政書士藤原七海事務所

参考法令・資料

  1. IT導入補助金 2025 IT導入支援事業者登録要領
  2. IT導入補助金 2025 インボイス枠(インボイス対応類型)
  3. IT導入補助金 2025 IT導入支援事業者登録の手引き
  4. IT導入補助金 2025 ITツール登録要領
  5. IT導入補助金 2025 ITツール登録の手引き
  6. IT導入補助金 2025 ITツール登録申請にあたっての重点確認事項

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