【IT導入補助金】審査項目を踏まえた事業計画作成のポイント
IT導入補助金で採択されるためには、審査項目を踏まえた事業計画の作成が非常に重要です。 特に、2025年の第1次公募では、通常枠の採択率が50.7%、インボイス枠でも57.6%と、いずれも2024年(通常枠:約70%、インボイス枠:約90%)と比べて大きく低下しており、以前にも増して事業計画の内容が重視される傾向にあります。
本記事では、すでにIT導入補助金のベンダー登録を済ませたIT事業者様や、補助金申請を検討されている事業者様向けに、IT導入補助の審査項目と事業計画作成のポイントを、基本情報技術者かつ行政書士でもある筆者がわかりやすく解説いたします。

IT導入補助金の目的
事業計画を作成する際は、「IT導入補助金の制度の目的」と「審査項目」の両方に沿っていることが重要です。 まずは、目的をしっかり確認していきましょう。 下記は、公募要領に記載されているIT導入補助金の事業目的です。 「生産性向上」という言葉が2回使われていることからも、IT導入補助金では生産性の向上が特に重視されていることがよくわかります。 生産性の定義については後ほど解説いたします。
本事業は、中小企業・小規模事業者等が今後複数年にわたり相次いで直面する制度変更 (働き方改革、被用者保険の適用拡大、賃上げ、インボイスの導入)等に対応するため、生産性の向上に資するITツール(ソフトウェア、サービス等)を導入するための事業費等の経費の一部を補助等することにより、 中小企業・小規模事業者等の生産性向上を図ることを目的とする。
IT導入補助金の審査項目
次に、審査項目について確認していきましょう。 IT導入補助金の申請では、定量的な数値以外にも文章で説明する(定性的な)部分があり、そこで審査項目のうち、「事業面からの審査項目」を意識してアピールすることが重要です。特に求められるのは、自社の経営課題を正しく把握し、課題に対して明確な問題意識を持っていること、そしてその課題に対して導入予定のITツールの機能が適切にマッチしていることです。
審査項目 | 審査事項 |
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事業面からの審査項目 | ・自社の経営課題を理解し、経営改善に向けた具体的な問題意識を持っているか ・自社の状況や課題分析及び将来計画に対し、改善すべきプロセスが導入する「ITツール」の機能により期待される導入効果とマッチしているか ・内部プロセスの高度化、効率化及びデータ連携による社内横断的なデータ共有・分析等を取り入れ、継続的な生産性向上と事業の成長に取り組んでいるか 等 |
計画目標値の審査 | ・労働生産性の向上率 |
政策面からの審査項目 | ・生産性の向上及び働き方改革を視野に入れ、国の推進する関連事業に取り組んでいるか ・国の推進するセキュリティサービスを選定しているか ・以下、「加点項目について」6)にある賃上げに取り組んでいるか |
「計画目標値の審査」という項目では、労働生産性の向上率が審査の対象になることが明記されています。後ほど入力する「計画値」の欄で、現実的に達成可能な範囲で、できるだけ高い向上目標を設定できるかが重要なポイントとなります。
「政策面からの審査項目」の1点目と2点目:
1点目と2点目を訴求できるポイントはかなり限られており、実質的には任意の加点項目(IT戦略ナビwithの実施とその内容、えるぼし認定、くるみん認定、成長加速化マッチングサービス登録)が重視されていると言っていいと思います。
「政策面からの審査項目」の3点目:
3つ目のポイントは「賃上げ要件」です。本来は任意の加点項目ですが、審査項目として明記されているため、実質的には申請において非常に重要な要素と言えます。採択率が50%台と厳しくなっている現状をふまえると、もはや“任意”というより“実質的な必須項目”に近い位置づけです。 加点項目6の内容は、最低賃金を地域内の水準より+30円に設定すること、および給与支給総額の成長率を年1.5%とすることです。これらの条件は、他の補助金と比べてもそれほど厳しいものではありません。
加点項目(6)
補助金申請額が150万円未満の申請者で、事業計画期間において以下のすべてを満たす3年の事業計画を策定・実行していることが加点対象となります。
- 事業場内最低賃金(=事業場内で最も低い賃金)を、地域別最低賃金+30円以上の水準に設定すること。
- 給与支給総額※を、事業計画期間中に年平均成長率1.5%以上向上させること。
さらに、事業計画期間中に事業場内最低賃金を「地域別最低賃金+50円以上」とした場合は、追加の加点が行われます。
IT導入補助金の事業計画 - 定性的な記述項目
IT導入補助金の審査項目のうち、「事業面からの審査項目」では、定性的な記述でアピールすることが求められます。ところが、実際の申請書では、定性的に事業内容を説明できるのは255文字以内の記入欄しかありません。つまり、この限られたスペースだけで審査に対応する必要があります。 そのため、「事業面からの審査項目」にしっかり応えて採択を狙うためには、任意とされている加点項目を積極的に取りにいくことが、他の補助金以上に重要になると言えるでしょう。

IT導入補助金における主な任意の加点項目
- 「デジwith」のIT戦略ナビを実施していること
- 「成長加速マッチングサービス」に登録し挑戦課題を掲載していること
- 健康経営優良法人の認定を受けていること
- えるぼし認定またはくるみん認定を受けていること
- クラウド製品を導入していること
- 最低賃金+30円、給与支給総額の1.5%成長
IT導入補助金の事業計画 - 定量的な記述項目
IT導入補助金の事業計画では、特に「数値で示す目標(定量的な記載)」が重要です。 計画は大きく2つの柱に分かれており、1つ目は「賃上げ計画」、2つ目は「労働生産性の向上計画」です。 このうち、1点目の「賃上げ計画」は、申請額が150万円未満の場合は形式上「任意の加点項目」とされていますが、前述のとおり実質的には審査に大きく影響する重要な項目です。 採択率が50%台にとどまった2025年第1次公募を踏まえると、加点項目を確実におさえることが採択の鍵となります。
1.賃金引上げ計画
賃金引上げ計画のポイントは次の3点です。
- 給与支給総額の成長:3年間の事業計画期間中に、給与支給総額を年平均1.5%以上増加させること (※給与支給総額の定義は前述の通り、役員報酬も含まれます)
- 最低賃金の水準確保:事業場内の最低賃金が、地域別最低賃金に対して+30円以上の水準となっていること
- 従業員への表明:上記の計画について、あらかじめ従業員に対して書面等で明示し、共有していること


2.労働生産性の向上計画
労働生産性の向上は、IT導入補助金の制度目的そのものであり、事業計画の中でも最も重要な要素です。 申請にあたっては、以下の2つの数値的な要件を満たす必要があります。3%は最低限の要件ですので、採択に向けては、より高い比率の方が有利と言っていいと思います:
- 1年度目の労働生産性を3%以上向上させること
- 3年間の事業計画において、労働生産性の年平均成長率を3%以上とすること
さらに、設定した労働生産性の目標が実現可能かつ合理的であるかどうかも審査の対象となります。

人件費(円):損益計算書の「給与手当」、「旅費交通費」、「賞与」を合算した数値を入力
減価償却費(円):損益計算書の「減価償却費」の数値を入力してください。
付加価値額(円):営業利益に人件費及び減価償却費を加算した額です (付加価値額 = 営業利益 + 人件費 + 減価償却費)
従業員数(人):労働者名簿に記載のある従業員の合計人数を入力してください。
※従業員がいない場合、役員(代表者含む)又は事業主の人数を入力してください。
年間の平均労働時間:上記従業員のタイムカードや勤怠システムの記録から算出される年間の平均労働時間を算出してください。
給与支給総額(再掲):全従業員(非常勤を含む)及び役員に支払った給与等(給料、賃金、賞与及び役員報酬等は含み、福利厚生費、法定福利費や退職金は除く)をいいます。
まとめ
IT導入補助金には、行政庁に対する申請書類の作成を専門とする行政書士としての知見に加えて、深いITやシステムに関する知見と経験が必要です。 筆者は、ソフトウェアエンジニア経験が豊富で、かつ、基本情報技術者資格も有する行政書士として、IT事業者が安心・確実にIT導入補助金を申請できるよう相談に応じています。 当行政書士事務所は、freee、マネーフォワードなどの大手の主要なソフトウェアの代理店としての登録の他、新規開発のシステムのベンダー登録実績もあることから、各ソフトウェアのことも熟知した上でのIT導入補助金の申請に関わる助言が可能です。 加えて当事務所では、事業者様により上質なサービスを提供すべく 提携先の応用情報技術者を有する行政書士とともに、単独受任時と変わらない報酬での共同受任にも応じています。
「はじめてで不安」、「事業計画の作り方がわからない」――そんな方こそ、ぜひ一度ご相談ください。LINEやお問い合わせフォーム、お電話から、いつでもお気軽にご連絡いただけます(無料です)。安心してお任せいただけるパートナーとして、しっかりとサポートいたします。
提携先:行政書士藤原七海事務所
IT導入補助金の報酬:
プラン | 報酬額(税抜き表示) |
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IT導入補助金(1件) | 着手金:30,000円 成功報酬:採択金額の10% |
プラン | 報酬額(税抜き表示) |
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IT導入補助金申請(1件) | 着手金:30,000円 成功報酬:採択金額の10% |
ベンダー登録の報酬:
マネーフォワードクラウド、freee会計、Lark、MS365、kintoneの場合:
プラン | 報酬額(税抜き表示) |
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IT導入支援事業者登録+ITツール登録 (1ツール分込み) | 70,000円(不採択の場合は全額返金) |
プラン | 報酬額(税抜き表示) |
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IT導入支援事業者登録+ITツール登録 (1ツール分込み) | 75,000円 (不採択の場合は全額返金) |
自社開発ツールの場合:
プラン | 報酬額(税抜き表示) |
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IT導入支援事業者登録+ITツール登録 (1ツール分込み) | 100,000円(不採択の場合は全額返金) |
プラン | 報酬額(税抜き表示) |
---|---|
IT導入支援事業者登録+ITツール登録 (1ツール分込み) | 100,000円 (不採択の場合は全額返金) |
参考法令・資料
- IT導入補助金 2025 IT導入支援事業者登録要領
- IT導入補助金 2025 インボイス枠(インボイス対応類型)
- IT導入補助金 2025 IT導入支援事業者登録の手引き
- IT導入補助金 2025 ITツール登録要領
- IT導入補助金 2025 ITツール登録の手引き
- IT導入補助金 2025 ITツール登録申請にあたっての重点確認事項
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