事業継続力強化計画(BCP計画)認定制度を行政書士が解説 - ものづくり補助金の加点!
事業継続力強化計画(BCP計画)認定制度は、中小企業等が定める事業継続力強化計画(BCP計画)を経済産業大臣が認定する制度です。 認定を受けないBCP計画を立てることももちろん重要ですが、本制度では、中小企業のBCP計画の策定を後押しするため、 認定を受けた企業に対し、補助金の加点や、低利融資等の支援策が用意されていることが特徴です。
支援策の中では、ものづくり補助金と中小企業省力化補助金(一般型)の加点となっている点がポイントです。 とくに、ものづくり補助金は、最近の採択率が30%程度ですので、採択のためには加点を得ることが重要です。 本稿では、銀行への勤務経験もある行政書士が、 事業継続力強化計画(BCP計画)の要件・必要資料、申請方法と手順、その他メリットについて解説いたします。

事業継続力強化計画(BCP計画)認定の要件 - 計画策定
事業継続力強化計画(BCP計画)の認定ためには、まずは計画を5つのステップに沿って策定することが重要です。 この5つのステップは、一般的な思考のフレームワークではなく、中小企業庁の本計画に係る手引きに記載されているステップで、 この5つのステップをもとに、そのまま申請画面の計画が作成が可能です。

Step1.事業継続力強化の目的の検討
目的は、「事業継続力強化計画作成指針」の記載に沿ったものとします。
事業継続力強化の目的については、イの自らの事業活動が担う役割を踏まえつつ、事業継続力強化に当たっての基本的な考え方を検討した上で、サプライチェーンや地域経済全体に与える影響や、従業員に対する責務等、自らの事業継続力強化が自然災害等による経済社会的な影響の軽減に資する観点から、記載するものとする。
出所: 「事業継続力強化計画作成指針」抜粋(第1ロ)
Step2.災害などのリスクの確認・認識
ハザードマップ等を活用しながら、まずは事業所・工場などが立地している地域の災害等のリスクを確認・認識します。 被害想定を基に、「ヒト(人員)」、「モノ(建物・設備・インフラ)」、「カネ(リスクファイナンス)」、「情報」の4つの切り口から自社にどのような影響が生じるかを考えます。 企業の直面するリスクには、災害、感染症、サイバー攻撃、災害等、様々なものがありますが、計画の中で、災害については必ず記載が必要です(要件)。また、感染症とサイバー攻撃については、計画の策定上は必須とはされないも「計画の策定に 取り組んでいただくようお願いします。」と強く推奨されています(実質の要件)。
Step3.初動対応の検討
災害等が発生した直後の初動対応を検討します。具体的には、(1)人命の安全確保、(2)非常時の緊急事態体制の構築、(3)被害状況の把握・被害情報の共有の3点について、検討します。 言うまでもなく、これらはそのまま申請上の計画の記載内容となります。
Step4.ヒト、モノ、カネ、情報への対応
STEP2で検討したヒト、モノ、カネ、情報への影響を踏まえ、災害等に備え事前にどのような対策を実行することが適当か検討します。申請上の計画も、ヒト、モノ、カネ、情報それぞれについて言及します。
Step5.平時の推進体制
事業継続力の強化は計画するだけでなく、平時の取組(訓練)が重要とされ、とくに下記の3点について体制を整える必要があります。
- 経営層の指揮の下、事業継続力強化計画の内容を実行すること
- 年に一回以上の訓練・教育を実施すること
- 計画の見直しを年1回以上実施すること
計画は毎年見直すこととされている一方で、事業継続力強化計画自体の実施期間は3年とされているので、3年経過後は、もう一度申請(更新)をする必要があります(令和4年6月27日、中小企業等経営強化法施行規則の一部を改正する省令)。
計画の申請と認定
計画を策定した後は、GBizIDを使って、「事業継続力強化計画電子申請システム」上で計画をテキストで入力、申請します。よって、予めワード等で作成した事業継続力強化計画を転記する形で進めます。 下記は法人名等を記載するの申請の冒頭部分ですが、計画の入力画面も似たような画面です。

認定までの期間(標準処理期間)
事業継続力強化計画(BCP計画)の申請から認定までの期間(標準処理期間)は45日間と法定されています。ただし、計画が要件を満たしておらず、資料の補正を求められた場合、その他不備等で資料の再提出を求められた場合は、補正や再提出を完了するまでは、標準処理期間45日間の進行は止まり、認定までより日数を要します。
BCP認定事業者のメリット
事業継続力強化計画(BCP計画)の認定を受けることで次の5つメリットがあります。
- BCP認定ロゴマークの活用
- 金融支援
- 税制優遇
- 補助金の加点
- 損害保険料の割引
1.BCP認定ロゴマークの活用
BCP認定を取得すると、認定ロゴマークを利用できます。名刺やHPへロゴマークを掲載し、 顧客や取引先へ防災対策をアピールすることができます。

2.金融支援
金融支援は、4種類ありますが(2025年現在)主な金融支援は次の2点です。 1点目が日本政策金融公庫による低利融資(BCP資金)で、設備投資資金の基準金利が0.9%引き下げになります。
2-1.日本政策金融公庫の金融支援
貸付金利 | 設備資金について、基準利率から0.9%引下げ(運転資金については基準利率) ※信用リスク・貸付期間などに応じて所定の利率が適用されます。 |
貸付限度額 | 中小企業事業:7億2,000万円 ※設備資金において、0.9%の引下げが適用となるのは、貸付限度額のうち4億円までです。 |
貸付期間 | 設備資金20年以内、長期運転資金7年以内(据置期間2年以内) |
2-2.信用保証協会の信用保証枠の拡大
金融支援の2点目は、民間金融機関から融資を受ける際、信用保証協会による信用保証のうち、普通保険等とは別枠での追加保証や保証枠の拡大が受けられるという内容です。 下記の通り普通保険、無担保保険、特別小口保険では枠が倍になります。

3.税制優遇
BCP認定を取得すると、中小企業防災・減災投資促進税制(特定事業継続力強化設備等の特別償却16%)を活用できます。 対象となる設備は下記の通り限定されています。また、これらをBCP計画に記載し、認定を受けた日から1年以内に事業の用に供することも条件とされます。

4.補助金の加点
加点の対象となる補助金は下記の5つです。 うち、ものづくり補助金と、中小企業省力化投資補助金(一般型)は、用途が広い一方で採択率が決して高くはないので(前者は30%程度、後者も同程度と推察される)、 BCP計画認定の加点は、是非ともとりたい加点です。ただし、前述の通り事業継続力強化計画の申請から認定までの期間(標準処理期間)は45日間ありますので、下記のどの補助金も公募要領の公開時からBCP計画の認定の準備を進めても間に合わず、BCP計画の認定は、公募要領の公開前に予め得ておく必要があります。
- ものづくり補助金
- 事業承継・引継ぎ補助金
- 中小企業省力化投資補助金(一般型)
- 地方公共団体による小規模事業者支援推進事業
- なりわい再建支援補助金
ものづくり補助金と、中小企業省力化投資補助金(一般型)については、私の下記の記事をご覧ください。
ものづくり補助金の第19次公募要領 ― 要件、対象の経費、申請のポイントを解説2025年 中小企業省力化投資補助金(一般型) - 申請の要件、対象経費、スケジュールまとめ
事業継続力強化計画(BCP計画)の策定には一定の労力と時間を要します。 筆者は、銀行勤務経験(法人経験)及び投資銀行業務の経験も有する行政書士として、中小企業の皆様の事業継続力強化計画(BCP計画) 策定の相談と申請支援に応じています。 加えて当事務所では、中小企業の皆様により上質なサービスを提供すべく 当事務所代表と同様の知識と経験を有する行政書士とともに、単独受任時と変わらない報酬での共同受任にも応じています。 LINE、問い合わせフォーム、または、お電話にてお気軽にお問い合わせ頂ければ幸いです。
提携先:行政書士藤原七海事務所
参考法令・資料
- 中小企業等経営強化法 - 事業継続力強化計画認定制度の概要
- 中小企業等経営強化法 - 事業継続力強化計画策定の手引き
- 中小企業等経営強化法施行規則の一部を改正する省令(令和4年6月27日)
本稿の筆者

行政書士
基本情報技術者
J.S.A. ワインエキスパート
古森洋平 Yohei Komori