「事業環境変化に対応した経営基盤強化事業(一般コース)」 ― 要件、対象の経費、申請のポイントを解説
【2025年6月14日作成】
東京都の助成金「事業環境変化に対応した経営基盤強化事業(一般コース)」は、ポストコロナにおける需要回復や、物価・人件費の高騰、消費者ニーズの多様化など、急速に変化する事業環境に適応するため、 中小企業の既存事業を「深化」または「発展」させる取組に対し、必要な経費を支援する制度です。 本稿では、補助金の目的、申請スケジュール、補助対象経費、基本要件や特例措置などの主要なポイントを、銀行と投資銀行に勤務経験のある行政書士の古森(こもり)が解説します。 なお東京都では、補助金は助成金と呼ばれます。

申請の要件
申請には、以下の8つの主な要件をすべて満たす必要があります。重要な要件は1点目と2点目です(2点目については、米国関税措置の影響により、次期決算期の売上高が直近決算期と比べて減少する見込みであることも含まれます)。
- 本店(実施場所が都内の場合は支店でも可)の登記が都内にある中小企業者であること
- 直近決算期の売上減少または損失の計上など、経営状況の一定の悪化があること
- 本事業または小規模向け助成と重複して申請していないこと
- 実施場所は自社が所有・賃借する拠点であること
- 必要書類のすべてを期限内に提出可能であること
- 暴力団・風俗・ギャンブル等の業態でないこと
- 税金や都への債務の滞納がないこと
- その他、公社が不適切と判断しないこと
申請スケジュールと申請書類
以下は、2025年度(令和7年度)に行われる第1回目の申請から、実績報告や完了検査までの一連の流れを示したものです。必ず面接による審査が行われることが、この補助金の特徴です。2025年は全6回の募集(公募)が予定されており、毎回ほぼ同じスケジュールで進むと見込まれています。
- 申請受付期間: 令和7年5月2日(金)~ 5月14日(水)
- 書類審査: 令和7年6月~
- 面接審査: 令和7年7月4日(金)~ 7月17日(木)
- 交付決定: 令和7年8月下旬予定
- 助成事業実施期間: 交付決定日から1年間
- 実績報告・完了検査: 事業実施後1か月以内に書類提出、同検査後に確定・支払
申請自体は、jGrantsを使用した電子申請です。申請書類としては事業計画、資金計画、経費明細に関する資料、決算書など多数の書類が求められるため、事前の準備と各種支援機関の活用が推奨されます。

注意
助成対象期間は、交付決定日から1年間です。この期間内に契約・実施・支払が完了する経費が助成対象です。
2025年度の予定
募集回 | 申請受付期間 |
---|---|
第1回 | 令和7年5月2日から5月14日まで |
第2回(予定) | 令和7年7月1日から7月14日まで |
第3回(予定) | 令和7年9月1日から9月12日まで |
第4回(予定) | 令和7年11月4日から11月14日まで |
第5回(予定) | 令和8年1月5日から1月14日まで |
第6回(予定) | 令和8年3月2日から3月13日まで |
補助の上限額と補助率
補助上限額は800万円で一定ですが、会社の規模と賃上げ計画の有無によって補助率が次の通り変わります。
区分 | 補助率 | 補助上限額 |
---|---|---|
中小企業者・小規模企業者 | 2/3以内 | 800万円 |
中小企業者(賃金引上げ計画) | 3/4以内 | 800万円 |
小規模企業者(賃金引上げ計画) | 4/5以内 | 800万円 |
中小企業の定義
中小企業の定義は次の通りです。資本金または従業員数のどちらか一方が基準以下であれば「中小企業」と見なされます。 株式会社、合同会社等の法人のほか、個人事業主でも該当します。

小規模企業者の定義

補助対象経費
補助対象経費は、以下のような項目が含まれます。これだけ幅広い経費が対象になる補助金は珍しいです。「設備投資」から「専門家の活用」、「販売促進」まで、事業の成長に必要な幅広い取り組みが補助対象となっています。
- 原材料・副資材費
- 機械装置・工具器具費
- 委託・外注費
- 産業財産権出願・導入費
- 規格等認証・登録費
- 設備等導入費
- システム等導入費
- 専門家指導費
- 専門家指導費のみの申請はできません。
- 不動産賃借料
- 販売促進費
- 上限200万円
- 既存事業の「発展」による新たな商品・サービス等の販売促進経費についてのみ申請可能です。
- 販売促進費のみの申請はできません。
- その他経費
- 上限100万円
- その他経費のみの申請はできません。
審査について
申請後は、まず書類審査が行われ、一定の基準を満たした場合には面接審査へ進みます。面接審査の日時・場所はメールで通知され、変更はできません。事前に面接期間中は対応できるようスケジュール調整が必要です。 書類審査・面接審査いずれも、基準に満たないと判断された場合は「不採択」となり、不採択通知が送付されます。
書類審査
提出された申請書に対して、専門家が次の観点で審査を行います。評価が一定水準に達した場合、面接審査へと進みます。
審査の視点
- 発展性(既存事業の深化・発展に資する取組か)
- 市場性(ポストコロナ等の事業環境変化に対する市場分析)
- 実現性(取組のための体制や準備が整っているか)
- 優秀性(創意工夫や将来性が見られるか)
- 自己分析力(自社の状況を的確に把握しているか)
面接審査
面接審査は原則として対面で実施され、出席できるのは事業者の代表者または役員・従業員のうち最大2名までです。 顧問・コンサルタントの同席や代理出席は禁止されており、違反があった場合は審査に悪影響を及ぼす可能性があります。
また、面接会場には録音・撮影機器などの電子機器は持ち込めません。説明は申請書類に基づいて行い、補足資料等の使用は最小限に限られます。面接はすべて日本語で行われます。 指定日時に出席しない場合は、申請を辞退したものとみなされます。
まとめ
東京都の補助金「事業環境変化に対応した経営基盤強化事業(一般コース)」は、ポストコロナや物価高騰などの環境変化に適応し、既存事業の深化・発展を図る中小企業の取り組みに対して、最大800万円の助成が受けられる非常に実用的な制度です。
筆者は、銀行および投資銀行での勤務経験を持つ行政書士として、金融と経営の両面から皆様の申請をサポートしています。また、当事務所では、同等の知識と経験を有する提携行政書士と共同で、単独受任時と変わらない報酬体系での支援も行っています。
「初めてで不安」、「申請書をうまく作れない」、「面接にどう備えればよいか分からない」と感じている方も、お気軽にご相談ください。LINE・フォーム・お電話から、初回無料でご相談いただけます。制度と現場の両方に強い専門家として、安心・確実な申請をご支援いたします。
提携先:行政書士藤原七海事務所
参考法令・資料
- 事業環境変化に対応した経営基盤強化事業【助成金 募集要項(一般コース)】
- 東京都中小企業振興公社
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行政書士
基本情報技術者
J.S.A. ワインエキスパート
古森洋平 Yohei Komori
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