「事業環境変化に対応した経営基盤強化事業(一般コース)」 ― 要件、対象の経費、申請のポイントを解説

【2025年9月14日更新】

東京都の助成金「事業環境変化に対応した経営基盤強化事業(一般コース)」は、ポストコロナにおける需要回復や、物価・人件費の高騰、消費者ニーズの多様化など、急速に変化する事業環境に適応するため、 中小企業の既存事業を「深化」または「発展」させる取組に対し、必要な経費を支援する制度です。 本稿では、補助金の目的、申請スケジュール、補助対象経費、基本要件や特例措置などの主要なポイントを、銀行と投資銀行に勤務経験のある行政書士の古森(こもり)が解説します。 なお東京都では、補助金は助成金と呼ばれます。

東京都の助成金「事業環境変化に対応した経営基盤強化事業(一般コース)」― 要件、対象の経費、申請のポイントを解説

申請の要件

本助成金を申請するためには、以下の8つの要件をすべて満たす必要があります。
特に重要なのは①東京都内に登記があることと、②経営環境の変化により一定の悪化が見られることです。
それぞれの要件の意味についても補足します。

  1. 本店(実施場所が都内の場合は支店でも可)の登記が都内にある中小企業者であること
    東京都の制度であるため、都内に拠点を持つことが前提となります。実施場所が都内であれば支店での申請も可能です。 個人事業主の場合は、納税地が都内にあればこの要件は満たします。
  2. 直近決算期の売上高の減少や損失計上など、経営状況が一定程度悪化しており、経営環境の変化に対応する必要があること
    単なる成長投資ではなく、ポストコロナや物価高騰など、経営環境の変化に迫られて対応が必要な企業を支援する制度であるためです。
  3. 本事業または小規模向け助成と重複して申請していないこと
    公平性を保つため、同じ事業に複数の助成金を重複して申請することはできません。
  4. 実施場所は自社が所有または賃借する拠点であること
    助成対象となる取組みは、自社の事業基盤を強化するものに限られるため、他社施設や不確定な場所での事業は対象外です。
  5. 必要書類を期限内に提出できること
  6. 暴力団関係者、風俗営業、ギャンブル業などでないこと
  7. 税金や東京都への債務を滞納していないこと
    公的な助成を受ける以上、納税や債務履行の状況が健全であることが条件となります。
  8. その他、公社が不適切と判断しないこと

申請スケジュールと申請書類

以下は、2025年度(令和7年度)第3回公募について、申請から実績報告・完了検査までの流れを示しています。本補助金は面接審査が必須です。2025年は全6回の公募が予定され、第1回~第3回はほぼ同じ日程で実施されました。第4回以降も同様の日程になる見込みです。

  • 申請受付期間: 令和7年9月1日(月)~ 9月12日(金)
  • 書類審査: 令和7年10月~
  • 面接審査: 令和7年11月4日(火)~ 11月14日(金)
  • 交付決定: 令和7年12月下旬予定
  • 助成事業実施期間: 交付決定日から1年間
  • 実績報告・完了検査: 事業実施後1か月以内に書類提出、同検査後に確定・支払

申請自体は、jGrantsを使用した電子申請です。申請書類としては事業計画、資金計画、経費明細に関する資料、決算書など多数の書類が求められるため、事前の準備と各種支援機関の活用が推奨されます。

東京都の助成金のスケジュール

注意
助成対象期間は交付決定日から1年間です。対象となる経費は、この期間内に契約・実施・支払のすべてが完了している必要があります。

2025年度の予定

募集回申請受付期間
第1回令和7年5月2日から5月14日まで(受付終了)
第2回令和7年7月1日から7月14日まで(受付終了)
第3回令和7年9月1日から9月12日まで(受付終了)
第4回令和7年11月4日から11月14日まで
第5回令和8年1月5日から1月14日まで
第6回令和8年3月2日から3月13日まで

補助の上限額と補助率

補助上限額は800万円で一定ですが、会社の規模と賃上げ計画の有無によって補助率が次の通り変わります。

区分補助率補助上限額
中小企業者・小規模企業者2/3以内800万円
中小企業者(賃金引上げ計画)3/4以内800万円
小規模企業者(賃金引上げ計画)4/5以内800万円

中小企業の定義
中小企業の定義は次の通りです。資本金または従業員数のどちらか一方が基準以下であれば「中小企業」と見なされます。 株式会社、合同会社等の法人のほか、個人事業主でも該当します。

中小企業の定義

小規模企業者の定義

小規模企業者の定義

補助対象経費

本助成の対象経費は、事業基盤の強化に直結する支出を幅広くカバーします。設備の購入・更新、システムやソフトウェアの導入、専門家の活用、販路開拓や販売促進に関わる費用までを想定しています。 判断の目安は、既存事業の「深化」または「発展」に資するかどうかです。対象となる主な項目は、以下のリストで整理しています。計画検討の際は、対象期間内の契約・実施・支払の整合もあわせてご確認ください。

  1. 原材料・副資材費
    取組の実施に直接必要となる材料・資材の購入費。
    ※ この費用が対象かどうかは、要項で定める「使い道(対象用途)」と「使う時期(対象期間)」の基準で判断します。日常的な仕入・在庫補充とは区別してください。
  2. 機械装置・工具器具費
    生産性向上や品質安定に資する機械・装置、工具・器具の取得費。
  3. 委託・外注費
    取組の一部を外部に委ねる際の費用(設計・製作・検証・クリエイティブ等を想定)。
  4. 産業財産権出願・導入費
    特許・意匠・商標などの出願、権利導入に伴う費用。
  5. 規格等認証・登録費
    取組の実施に必要な規格・認証・登録の取得費用(必要に応じて試験・検査等を含む)。
  6. 設備等導入費
    設備・什器等の購入および導入に伴う費用。(設置・運搬等の付随費用の扱いは要項をご確認ください)
  7. システム等導入費
    ソフトウェアや業務システムの導入・開発・設定等に係る費用(ライセンス費用を含む場合あり)。
  8. 専門家指導費単独申請不可
    • 経営・技術・デザイン・販促等、専門家からの助言・指導に係る費用。
    • 専門家指導費のみの申請はできません。
  9. 不動産賃借料
    実施場所に係る賃借料。対象期間および実施拠点との紐づけが前提です。
  10. 販売促進費上限 200万円単独申請不可
    • 対象:既存事業の「発展」に伴う新たな商品・サービス等の販売促進に係る費用。
    • 販売促進費のみの申請はできません。
  11. その他経費上限 100万円単独申請不可
    • 内装費は本区分に含まれます。
    • その他経費のみの申請はできません。

審査について

申請後は、まず書類審査が行われ、一定の基準を満たした場合には面接審査へ進みます。面接審査の日時・場所はメールで通知され、変更はできません。事前に面接期間中は対応できるようスケジュール調整が必要です。 書類審査・面接審査いずれも、基準に満たないと判断された場合は「不採択」となり、不採択通知が送付されます。

書類審査

提出された申請書に対して、専門家が次の観点で審査を行います。評価が一定水準に達した場合、面接審査へと進みます。

審査の視点

  1. 発展性(既存事業の深化・発展に資する取組か)
  2. 市場性(ポストコロナ等の事業環境変化に対する市場分析)
  3. 実現性(取組のための体制や準備が整っているか)
  4. 優秀性(創意工夫や将来性が見られるか)
  5. 自己分析力(自社の状況を的確に把握しているか)

面接審査

面接審査は原則として対面で実施されます。出席できるのは、事業者の代表者または役員・従業員のうち最大2名です。 顧問やコンサルタントの同席・代理出席は認められません。

また、面接会場には録音・撮影機器などの電子機器は持ち込めません。説明は申請書類の内容を基礎に行い、補足資料の使用は必要最小限にとどめてください。面接はすべて日本語で実施されます。 指定された日時に出席しない場合は、申請を辞退したものとみなされます。

「一般コース」と「小規模事業者向けアシストコース」の違い

東京都の助成金「事業環境変化に対応した経営基盤強化事業」には、本稿でご紹介した一般コースの他に、小規模事業者アシストコースが設けられています。 両者の主な違いは次の5点です。

1) 対象者

一般コースは、東京都内で事業を行う中小企業者(個人事業主を含む)が対象です。前述の通り、定義は業種ごとに資本金や従業員数で区分されます。 一方、小規模事業者アシストコースは、中小企業者のうち、常時使用する従業員が製造では20人以下、商業・サービス業では5人以下の小規模企業者に対象が限定されます。

2) 助成率・上限

原則の助成率は両者で共通の2/3ですが、補助上限額が大きく異なります。

コース助成率上限額
一般コース原則2/3
賃金引上げ計画実施時:
中小企業者 3/4、 小規模企業者 4/5
800万円
小規模事業者アシストコース原則2/3
賃金引上げ計画実施時:4/5
200万円

3) 審査方式

一般コースでは、書類審査に加え、専門家による面接審査(原則対面)が実施されます。計画内容の実現性や経営者の意欲を確認される点が特徴です。 一方、小規模事業者アシストコースでは書類審査のみで、面接は行われません。

4) 助成対象経費の範囲

一般コースは、本稿でご紹介したように「設備等導入費」と「システム等導入費」以外にも幅広い経費が対象になっています。
一方、小規模事業者アシストコースでは、対象経費は「設備等導入費」と「システム等導入費」に限定されます。

両コースの申請要件、事業計画、審査の基準はは共通ですが、対象者の範囲や助成上限額、審査方式、経費対象の広さに違いがあります。 いずれか一方しか申請できませんので、自社の規模や計画内容に応じて、最適なコースを選択ください。

まとめ

東京都の助成金「事業環境変化に対応した経営基盤強化事業(一般コース)」は、ポストコロナや物価高騰などの環境変化に対応し、既存事業の深化・発展に取り組む中小企業を、幅広い対象経費で支援する実務性の高い制度です。最大800万円までの助成を受けられます。

筆者は、銀行および投資銀行での勤務経験を持つ行政書士として、金融と経営の両面から皆様の申請をサポートしています。 また、当事務所では、当事務代表と同様に知識と経験が豊富な提携先の行政書士と共同で、単独受任時と変わらない報酬体系での支援も行っています(なないろバックオフィス)。 2人も東京都行政書士会所属で、東京都の助成金の支援経験が豊富です。

とくに「初めてで不安」、「申請書をうまく作れない」と感じている方は、お気軽にご相談ください。 LINE・フォーム・お電話から、初回無料でご相談いただけます。安心・確実な申請をご支援いたします。

提携先:行政書士藤原七海事務所

当事務所の報酬:

プラン報酬額(税抜き表示)
事業環境変化に対応した経営基盤強化事業(一般コース)着手金:75,000円
成功報酬:採択金額の10%

参考法令・資料

  1. 事業環境変化に対応した経営基盤強化事業【助成金 募集要項(一般コース)】
  2. 東京都中小企業振興公社 

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Yohei Komori

行政書士
基本情報技術者
J.S.A. ワインエキスパート
古森洋平 Yohei Komori

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