2025年 新事業進出補助金の加点一覧 - 銀行出身の行書書士が解説!
【2025年5月7日作成】
2025年4月22日に新事業進出補助金の公募要領が公開されました。 新事業進出補助金の採択率は、類似のものづくり補助金の採択率が近年30%~40%で推移することを勘案すると、同程度かそれ以下であると思われ、採択に向けては、事業計画の内容に加えて、加点をいかに積み上げるかが極めて重要です。
本稿では、銀行への勤務経験もある行政書士が、本稿では、公募要領に記載の審査項目も参考に、事業計画の作成方法について詳しく解説します。

「中小企業新事業進出補助金」の概要、スケジュール、補助率、補助上限額、補助対象経費、事業計画書の書き方について、下記の記事で詳しく解説しています。
2025年 中小企業新事業進出補助金 - 申請の要件、対象経費、スケジュール中小企業新事業進出補助金の事業計画書の書き方1.パートナーシップ構築宣言

パートナーシップ構築宣言とは、大企業と中小企業の共存共栄や下請取引の適正化を目的に政府が推進する自主宣言制度です。 自社のウェブサイト等で宣言文を公表し、専用ポータルサイトに登録することで「宣言企業」として認められます。
認定要件(宣言の内容と手続き): 自社が取引先とのパートナーシップを構築するために取り組む事項(例えば下請企業への適正な配慮や価格決定の透明化など)を明記した宣言文を作成し、公表することが必要です。 具体的な様式はパートナーシップ構築宣言ポータルサイトから入力・登録します。特別な審査はなく、フォーム送信のみの簡単な手続きで完了します。
取得までの期間: オンラインで宣言内容を登録すれば即日〜数日程度でサイト上に公表されます。9項目の中でも最もハードルが低いと言えます。公式ポータルサイト上で宣言企業一覧に掲載されることで対外的なアピールにもなります。 なお、パートナーシップ構築宣言は、中小企業新事業進出補助金のみならず、ものづくり補助金においても加点にもなります。
2. くるみん認定(次世代育成支援認定企業)

くるみん認定は、次世代育成支援対策推進法(次世代法)に基づき、子育てサポート企業として厚生労働大臣から認定を受ける制度です。企業が従業員の仕事と子育ての両立支援に積極的に取り組み、一定の要件を満たした場合に「くるみんマーク」を付与されます。
認定要件: まず次世代法に基づく一般事業主行動計画を策定し、社内周知・外部公表したうえで、計画を都道府県労働局に届け出ます。計画期間中に育児支援のための目標を実施・達成し、その結果を踏まえて労働局へ認定申請を行います。認定基準として、計画目標の達成に加え、育児休業の取得状況や所定外労働の削減など複数の条件があります。例えば「育児休業取得率○%以上」や「所定外労働時間の上限設定」等、企業規模に応じた基準をクリアする必要があります。
取得までの期間: 計画期間の終了後に申請できる仕組み上、計画策定から認定取得まで数年を要するケースが一般的です。たとえば 2 年間の行動計画を立てた場合、計画実施に 2 年、その後労働局での審査に 1~2 か月程度かかります。書類審査自体はおおむね 1 か月前後で完了し、認定通知と「くるみんマーク」データが交付されます。余裕をもって取り組みを開始することが重要です。
プラチナくるみんはくるみん認定のより上位の認定なので、要件を満たしますが、くるみん認定より認定のハードルが低いトライくるみん認定では、加点要件を満たさないと考えられます。関連し、くるみん認定は、中小企業新事業進出補助金のみならず、ものづくり補助金においても加点にもなります。
3. えるぼし認定(女性活躍推進企業)

えるぼし認定は、女性活躍推進法に基づき、女性の活躍推進に優れた企業を厚生労働大臣が認定する制度です。取り組み状況に応じて★1〜3段階と最上位のプラチナえるぼしの計4段階があり、自社が達成した基準項目の数によって認定ランクが決まります。
認定要件: まず女性活躍推進法に基づく一般事業主行動計画を策定・届出し、女性の登用や継続就業に関する自社の数値目標を定めます。その上で、以下の認定基準項目(厚労省が定める評価項目)のうち一定数以上を満たす必要があります。
・採用: 新卒や中途採用における女性比率
・継続就業: 女性の勤続年数、離職率
・労働時間等: 時間外労働の状況や有給取得率
・管理職比率: 女性管理職の割合
・多様なキャリアコース: 女性の配置やキャリア形成の取組み など
上記5分野で定められた基準のうち、★1なら2項目以上、★2は3項目以上、★3は5項目全てを満たすことが求められます(プラチナえるぼしはさらに高水準の要件)。要件充足後、労働局へ申請書と実績データを提出して審査を受けます。
取得までの期間: 自社の人事データ整備や社内制度の充実など準備に時間と労力を要する点が特徴です。要件をクリアするための職場環境整備には半年〜数年単位の取組みが必要でしょう。申請後の審査期間自体はおおむね1〜2か月程度で、書類審査と必要に応じてヒアリング等が行われます。実際、東京労働局の場合申請後約1.5か月で認定通知を受け取った企業の例があります。計画的にデータ収集・改善を行い、余裕をもって申請することが大切です。
えるぼし認定は、中小企業新事業進出補助金のみならず、ものづくり補助金においても加点にもなります。
4. アトツギ甲子園への出場
アトツギ甲子園は、中小企業庁主催の後継者向けビジネスピッチコンテストです。事業承継予定者(いわゆる “跡継ぎ”)が先代の経営資源を活かした新規事業アイデアを競い合う場で、地方予選を勝ち抜いた優秀な後継者が全国大会(決勝)に進出します。このピッチ大会に出場した経験があると補助金審査で加点されます。
出場要件: エントリー資格は「39歳以下の中小企業後継者」のみとされています。ここで言う後継者とは、現時点で代表権は持っていないものの将来事業承継を予定している方(親族外承継予定者を含む)を指します。エントリーに際しては、自社の現事業の強みや承継後に挑戦したい新規事業プランをまとめた応募書類を提出し、書類審査を通過する必要があります。
取得までの期間(大会スケジュール): アトツギ甲子園は年1回開催で、毎年エントリー受付は秋頃、地方大会(ブロック大会)が翌年1〜2月、決勝大会が2月下旬頃に行われるスケジュールです。例えば第5回(2025年開催)はエントリー締切後、1月中に各地域ブロック予選 → 2月20日に東京で決勝という流れでした。エントリーから実際に出場し加点対象となるまで数か月の準備・審査期間があるイメージです。応募には事前説明会への参加や支援機関との相談も活用すると良いでしょう。
5. 健康経営優良法人認定

健康経営優良法人は、従業員の健康保持増進に戦略的に取り組む法人を経済産業省と日本健康会議が認定する制度です。大規模法人部門と中小規模法人部門に分かれ、一定の基準を満たした企業が毎年認定されます。認定年度に「健康経営優良法人(○○年)」の称号が与えられ、企業はそのロゴマークを使用できます。
認定要件: 健康経営の実践状況を評価する「健康経営度調査」に回答し、そのスコア等に基づき審査されます。評価項目は、経営理念・方針への位置付け、組織体制、制度・施策実行、評価・改善、法令順守・リスクマネジメント等、多岐にわたります。具体的には、たとえば定期健康診断受診率の高さ(中小部門で概ね80%以上)、健康増進施策の実施(運動機会の提供、メンタルヘルス対策など)、長時間労働の抑制や有給休暇取得の促進など、従業員の健康管理に優れた取り組みを行っていることが求められます。これらについて疎明する資料を用意し、所定のオンラインシステムで申請します。
取得までの期間: 健康経営優良法人認定は年1回のみ申請受付がある点に注意が必要です。毎年概ね8〜10月が申請期間となり、書類提出後、年明け〜翌年3月頃まで審査が行われます。結果発表・認定日は例年翌年3月上旬で、その時点で認定企業リスト公表と認定通知が行われます。したがって申請締切から認定取得までは約5〜6か月程度と考えられます。認定の有効期間は1年間で、継続して称号を維持するには毎年の取り組み継続と再申請が必要です。
健康経営優良法人の認定は、中小企業新事業進出補助金のみならず、ものづくり補助金においても加点にもなります。
6. 技術情報管理認証制度(TICS認証)
技術情報管理認証制度(通称:TICS)は、企業内で重要な技術情報やノウハウを適切に管理する体制を整えていることを第三者機関が認証する制度です。経済産業省が定めた基準に基づき、政府認定の民間認証機関が企業の情報管理体制を審査します。取得企業は経産省ウェブサイトに社名が公表され、認証マークを対外的に使用できるほか、補助金申請時に加点措置を受けられます。
認証要件: 産業競争力強化法に基づく制度であり、自社の守るべき技術情報を洗い出し、漏えい防止のための管理措置を講じていることが求められます。具体的には、機密情報へのアクセス権管理、社内規程の整備、従業員との秘密保持契約、サイバーセキュリティ対策など、多方面の情報セキュリティ措置を実施している必要があります。それらの体制について認証機関の書面審査・現地審査を受け、基準適合と判断されれば認証が取得できます。審査基準は ISO 27000 シリーズに類似しますが、本制度は特に自社の重要技術やノウハウの保護に焦点を当てている点が特徴です。
取得までの期間: 認証取得までの期間は比較的短く、申込みから約1〜2か月が目安とされています。事前に社内ルール整備や機密情報の特定を済ませておけば、審査プロセス自体は数週間程度で完了するケースもあります。ただし企業の規模や拠点数によって多少前後します。また認証費用は標準で50万円程度(規模による)発生します。取得後も3年ごとの更新審査が必要です。認証取得によって取引先からの信頼性向上や他の補助金(ものづくり補助金等)でも加点対象になるメリットがあります。
7. 成長加速化マッチングサービス登録
成長加速化マッチングサービスは、中小企業庁が 2025 年に開始したビジネスマッチングプラットフォームです。事業拡大や新規事業立ち上げなど成長志向を持つ中小企業が、自社の課題やニーズを登録すると、金融機関・投資家・認定支援機関などの「支援者」からコンタクトや提案を受けられる仕組みです。このサービスに会員登録(事業者登録)し、課題を登録した企業は補助金審査で加点となります。
登録要件: 日本国内の中小企業・小規模事業者であれば原則として登録可能です(利用無料)。会員登録には、中小企業庁のデータプラットフォーム「ミラサポ CONNECT」を通じて企業情報を入力し、社内の挑戦したい課題やニーズを具体的に登録します。課題例として「新商品の販路開拓」「設備投資の資金調達」「事業承継に伴う体制構築」などが挙げられます。登録内容に関心を持った支援者がいればマッチングが進みます(必ずしも支援者から連絡が来ることを保証するものではありません)。
取得までの期間: 登録手続き自体はオンラインで完結し、所要時間も短時間です。必要事項をフォーム送信すれば即時または数営業日内にアカウントが有効化され、マッチングサービス上で自社の課題が公開されます。したがって補助金申請までに間に合わせるには、申請締切直前でも登録可能ですが、余裕をもって課題内容を練って登録しておくと良いでしょう。なお本サービスへの登録により追加の報告義務等は特に発生せず、利用も無料です。
成長加速化マッチングサービスの登録は、中小企業新事業進出補助金のみならず、ものづくり補助金においても加点にもなります。
8. 再生事業者加点(事業再生計画策定中または完了企業)
「再生事業者」としての加点は、業績不振企業の再建に取り組んでいるケースが該当します。具体的には中小企業活性化協議会(旧 中小企業再生支援協議会)や金融庁の産業復興相談センターなど、公的な事業再生支援機関からサポートを受けている企業が対象です。これらの支援のもとで再生計画(事業再生計画)を策定中、もしくは直近 3 年以内に再生計画が成立した企業であれば補助金審査で加点されます。
認定要件: 上記のような公的支援を受けていること自体が要件であり、独立した認定制度ではありません。典型的には、業績が悪化し金融機関への債務返済が困難になった中小企業が各都道府県の中小企業活性化協議会に再生支援を申し込み、専門家(金融機関 OB や中小企業診断士など)の協力を得て事業再生計画を策定するプロセスがあります。その計画が金融機関等の同意を得て成立した場合や、現在策定のため調整中である場合に「再生事業者」とみなされます。また、産業競争力強化法に基づく事業再生計画の認定を受けたケースなども含まれます。
取得までの期間: 事業再生計画の策定には相応の時間(半年〜1年以上)を要することが多いです。財務資料の精査、再建策の立案、金融機関との調整など、複数ステークホルダーとの協議が必要となるためです。実際に計画が成立すれば加点対象となりますが、その頃には経営再建の途上にある状況と言えます。したがって「加点のために敢えて再生事業者になる」ものではなく、既に再生支援が必要な企業への救済措置的な加点と捉えるのが良いでしょう。自社が万一その状況にある場合には、早期に専門家に相談し、公的支援を受けることで結果的に補助金加点も得られる可能性があります。
9. 特定事業者該当
特定事業者とは、公募要領上で定められた特別なカテゴリーに属する事業者を指します。該当する場合、補助金審査での加点対象となります。公募要領には細かい定義がありますが、代表的な例として以下が挙げられています。
該当例:
・災害被災企業: 天災等の被害を受け事業継続に支障が生じた中小企業(罹災証明等により公的に被災が確認されたもの)
・中小企業活性化協議会等の支援を受けた企業: (再生事業者と重複)公的再生支援を受け再建中または計画を完了した企業
・産業競争力強化法に基づく認定を受けた企業: 事業再編計画や事業再生計画の認定制度を活用した企業 など
これら以外にも、公募要領には「特定事業者」の詳細な定義があります。平たく言えば、通常の中小企業者には該当しないが特例的に応募資格が認められる事業者を指します。たとえば中小企業の定義をやや超える規模の企業(いわゆる中堅企業)や、組合・公益法人等の一部も含まれる可能性があります。
取得までの期間: 特定事業者は新たに認定証明を取得する類のものではなく、企業の置かれた状況に応じて決まる区分です。そのため、自社が上述のような状況に該当して初めて加点を受けられるもので、意図的に短期間でこのステータスを得ることはできません。強いて言えば、災害被災企業の場合は被災証明の発行手続き(行政による調査後に証明書交付)が必要ですが、これは被災直後に行われます。また中堅企業の場合は公募要領上で資本金や従業員数要件を満たせば応募時に自動的に特定事業者とみなされます。要するに、自社が該当すればプラスの加点、該当しなければ深追いできない項目と言えます。
加点項目と取得までの期間の目安
下記がそれぞれの加点項目の取得までの期間を表にしたものです。「パートナーシップ構築宣言」と「成長加速化マッチング登録」の2つは簡単に取得が可能ですので、採択に向けては実質必須の加点項目と言ってもいいと思います。
加点項目 | 取得までの期間 |
---|---|
パートナーシップ構築宣言 | 即日〜数日 |
くるみん認定 | 約2〜3年(計画期間終了後 審査1〜2か月) |
えるぼし認定 | 準備半年〜数年+審査1〜2か月 |
アトツギ甲子園出場 | 約4〜5か月 |
健康経営優良法人 | 約5〜6か月 |
技術情報管理認証 (TICS) | 約1〜2か月 |
成長加速化マッチング登録 | 即日〜数営業日 |
再生事業者 | 半年〜1年以上 |
特定事業者 | 状況による(新手続き不要) |
まとめ
「中小企業新事業進出補助金」は、最大で9,500万円の補助が見込める大型の補助金である一方、採択率はさほど高くないことが想定される中、賃上げ要件他要件を満たす事業計画の策定と加点の獲得が極めて重要です。 筆者は、銀行勤務経験(法人営業)を有する行政書士として、中小企業の皆様の「中小企業新事業進出補助金」 の相談と申請支援に応じています。 加えて当事務所では、中小企業の皆様により上質なサービスを提供すべく 当事務所代表と同様の知識と経験を有する行政書士とともに、単独受任時と変わらない報酬での共同受任にも応じています。 LINE、問い合わせフォーム、または、お電話にてお気軽にお問い合わせ頂ければ幸いです。
提携先:行政書士藤原七海事務所
参考法令・資料
- 中小企業新事業進出補助金の公募要領
- 独立行政法人中小企業基盤整備機構 中小企業新事業進出補助金サイト
- 中小企業庁「新事業進出指針」- 令和7年4月22日
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