「事業環境変化に対応した経営基盤強化事業(小規模事業者向けアシストコース)」 ― 要件、対象の経費、申請のポイントを解説

【2025年9月20日作成】

東京都の助成金「事業環境変化に対応した経営基盤強化事業(小規模事業者向けアシストコース)」は、 コロナ後の需要回復や消費者ニーズの変化への即応が求められる一方で、 エネルギー・原材料価格や人件費の高騰が長期化するなど課題が山積する現状を踏まえ、小規模事業者が創意工夫を活かして既存事業を「深化」、「発展」させるための 計画を作成した場合に、必要な経費を支援する補助金です。

本稿では、制度の目的、申請スケジュール、補助対象経費、基本要件や特例措置などの主要ポイントを、 銀行・投資銀行勤務経験のある行政書士・古森(こもり)が分かりやすく解説します。 なお、東京都では「補助金」は「助成金」と呼称されます。

東京都の助成金「事業環境変化に対応した経営基盤強化事業(小規模事業者向けアシスト)」― 要件、対象の経費、申請のポイントを解説

申請の要件

本助成金(事業環境変化に対応した経営基盤強化事業(小規模事業者向けアシストコース))を申請するには、以下の8つの要件をすべて満たす必要があります。
特に重要なのは①都内に拠点(登記/納税地)があること②小規模事業者に該当すること、そして③経営環境の変化により一定の悪化が見られることです。 それぞれの要件の意味についても補足します。

  1. 都内に拠点があること(法人は本店登記が都内。実施場所が都内なら支店でも可/個人は納税地が都内)
    東京都の制度であるため、都内に拠点を持つことが前提です。実施場所が都内であれば支店での申請も可能です。
  2. 申請者が小規模事業者であること
    本コースは小規模事業者の取組を後押しする枠組みです。自社の規模が本コースの想定に合致していることが必要です。
  3. 直近期の売上減少や損失計上など、経営状況が一定程度悪化しており、環境変化への対応が必要であること
    単なる成長投資ではなく、ポストコロナや物価・人件費高騰等の環境変化に迫られて対応する取組を支援するための要件です。 損失の判定方法については、下段の補足を参照ください。
  4. 同一取組での重複申請をしていないこと(一般コース等との重複不可)
    公平性確保のため、同じ事業内容で他コースや他制度と重複申請・受給はできません。
  5. 実施場所が自社の所有または賃借する拠点であること
    自社の経営基盤を強化する取組に限定されるため、他社施設や不確定な場所での実施は対象外です。
  6. 必要書類を期限内に整えて提出できること
    事業計画や証憑類の不備・遅延は審査対象外となるため、計画的な準備が求められます。
  7. 反社会的勢力に該当しないこと、並びに公序良俗に反する業種でないこと
    公的資金を活用する制度のため、風俗営業・ギャンブル等の一部業種は対象外です。
  8. 税金や東京都への債務の滞納がないこと、その他、公社が不適切と判断しないこと

補足:要件③の損失の判定について(下記のいずれか)

  • 法人:損益計算書の営業利益がマイナス(=営業損失)であること。
  • 個人事業主(白色申告):収支内訳書の「所得金額」がマイナスであること(一般/農業/不動産)。
  • 個人事業主(青色申告):青色申告決算書の「差引金額」がマイナスであること(一般/農業/不動産)。

※上記はいずれも「損失を計上している」ことの判断基準です。要件③については、売上高の減少なと併せて確認してください。

申請スケジュールと申請書類(小規模事業者向けアシストコース)

以下は、2025年度(令和7年度)第2回公募について、申請から実績報告・完了検査までの流れを示しています。 日程・手続は公募要領の記載に基づきます。第3回以降のスケジュールは、9月20日現在未公表ですが、概ね同様のスケジュールで進むと思われます。

  • 申請受付期間: 令和7年8月1日(金)午前9時 ~ 8月14日(木)午後4時
  • 書類審査: 令和7年9月~
  • 交付決定: 令和7年10月下旬予定
  • 助成事業実施期間: 交付決定日から最長1年間
  • 実績報告・完了検査: 公募要領に定める期限・方法で提出(完了検査とあわせてアドバイザー派遣〈必須〉を実施)
  • アドバイザー派遣: 任意:交付決定日以降、助成事業者が希望する日/必須:完了検査とあわせて実施

申請自体は、jGrantsを使用した電子申請です。申請書類としては事業計画、資金計画、経費明細に関する資料、決算書など多数の書類が求められるため、事前の準備と各種支援機関の活用が推奨されます。

東京都の助成金「事業環境変化に対応した経営基盤強化事業(小規模事業者向けアシスト)」_スケジュール

注意
助成対象期間は交付決定日から1年間です。対象となる経費は、この期間内に契約・実施・支払のすべてが完了している必要があります。

2025年度の予定

募集回申請受付期間
第1回(申請受付は終了しました)
第2回(申請受付は終了しました)
第3回(予定)令和7年10月1日から10月14日まで
第4回(予定)令和7年12月1日から12月12日まで
第5回(予定)令和8年2月2日から2月13日まで

助成上限額と助成率(小規模事業者向けアシストコース)

本コースは小規模事業者(小規模企業者)が対象です。助成率は賃金引上げ計画の有無で変わり、上限額は一律200万円(千円未満切捨て)です。

区分助成率助成上限額
小規模事業者(通常)2/3以内200万円
小規模事業者(賃金引上げ計画を策定・実施4/5以内200万円

助成率は「助成対象経費」に対して適用されます。賃金引上げは計画の策定に加え実施まで行った場合に4/5が適用されます。

小規模事業者(小規模企業者)の定義
小規模事業者(小規模企業者)の定義は次の通りです。資本金または従業員数のどちらか一方が基準以下であれば要件を満たします。 株式会社、合同会社等の法人のほか、個人事業主でも該当します。

小規模企業者の定義

小規模企業者の定義

補助対象経費

小規模事業者向けアシストコースの助成対象経費は、 既存事業の生産性向上・業務効率化に直接必要で、公募要領で認められたものに限られます。 同補助金の一般コースや、同じ小規模事業者向けの小規模事業者持続化補助金と比べると、 対象となる経費の幅はより限定的(狭い)である点にご留意ください。

  1. 機械装置・工具器具費
    製品・サービスの改良等に直接使用する機械装置・工具器具の新規購入に要する経費。
    対象外:少額物品、リース・レンタル、既存機械の修繕・改造、他社設置 など。
  2. 設備等導入費
    本取組に直接必要な設備・備品の購入費および据付・搬入・撤去等の設置関連費
    対象外:共通仮設・一般管理・人件費等の間接費、維持管理・保守費、各種申請手数料 など。
  3. システム等導入費
    システム構築・改修、ソフトウェア・ハードウェア導入、クラウド利用、設定・運用保守(期間内分)に要する経費。
    対象外:従量課金のクラウド等一部、要件不明確なコンサル、過剰スペック、PC購入・自社Web制作 など。

審査について

申請後は、書類審査が行われます。必要に応じて、公社から追加資料の提出や照会(電話・メール等)がある場合があります。 書類審査の結果、基準を満たした申請については交付決定が通知され、基準に満たない場合は不採択として通知されます。 「一般コース」と異なり、「小規模事業者向けアシストコース」には面接審査はありません

審査の視点

  1. 発展性(既存事業の深化・発展に資する取組か)
  2. 市場性(ポストコロナ等の事業環境変化に対する市場分析)
  3. 実現性(取組のための体制や準備が整っているか)
  4. 優秀性(創意工夫や将来性が見られるか)
  5. 自己分析力(自社の状況を的確に把握しているか)

「小規模事業者向けアシストコース」と「一般コース」の違い

本稿でご紹介している小規模事業者アシストコースのほかに、 東京都の助成金「事業環境変化に対応した経営基盤強化事業」には一般コースも設けられています。 両者の主な違いは次の5点です。

1) 対象者

一般コースは、東京都内で事業を行う中小企業者(個人事業主を含む)が対象です。前述の通り、定義は業種ごとに資本金や従業員数で区分されます。 一方、小規模事業者アシストコースは、中小企業者のうち、常時使用する従業員が製造では20人以下、商業・サービス業では5人以下の小規模企業者に対象が限定されます。

2) 助成率・上限

原則の助成率は両者で共通の2/3ですが、補助上限額が大きく異なります。

コース助成率上限額
一般コース原則2/3
賃金引上げ計画実施時:
中小企業者 3/4、 小規模企業者 4/5
800万円
小規模事業者アシストコース原則2/3
賃金引上げ計画実施時:4/5
200万円

3) 審査方式

小規模事業者アシストコース書類審査のみで、面接は行われません。
一方、一般コースでは、書類審査に加え、専門家による面接審査(原則対面)が実施され、計画の実現性や経営者の意欲が確認されます。

4) 助成対象経費の範囲

小規模事業者アシストコースの対象経費は、「機械装置・工具器具費」「設備等導入費」「システム等導入費」に限定されています。 一方、一般コースは、これら以外も含めより幅広い経費が対象となります。

両コースで共通する部分(申請要件や事業計画の基本、審査の基本的観点)はありますが、対象者の範囲・助成上限額・審査方式・対象経費の広さに違いがあります。 いずれか一方のみ申請可能のため、自社の規模や計画内容に応じて最適なコースを選択してください。

一般コースについては、下記の私の記事も参考になさってみてください。

「事業環境変化に対応した経営基盤強化事業(一般コース)」 ― 要件、対象の経費、申請のポイントを解説

まとめ

東京都の助成金「事業環境変化に対応した経営基盤強化事業(小規模事業者向けアシストコース)」は、ポストコロナや物価高騰などの環境変化に対応し、既存事業の生産性向上・業務効率化に取り組む小規模事業者を支援する補助金(助成金)です。

筆者は、銀行および投資銀行での勤務経験を持つ行政書士として、金融と経営の両面から皆様の申請をサポートしています。 また、当事務所では、当事務代表と同様に知識と経験が豊富な提携先の行政書士と共同で、単独受任時と変わらない報酬体系での支援も行っています(なないろバックオフィス)。 いずれも東京都行政書士会所属で、東京都の助成金の支援経験が豊富です。

とくに「初めてで不安」、「申請書をうまく作れない」と感じている方は、お気軽にご相談ください。 LINE・フォーム・お電話から、初回無料でご相談いただけます。安心・確実な申請をご支援いたします。

提携先:行政書士藤原七海事務所

当事務所の報酬:

プラン報酬額(税抜き表示)
事業環境変化に対応した経営基盤強化事業(小規模事業者向けアシストコース)着手金:80,000円
成功報酬:採択金額の10%

今すぐ相談(全国対応、無料相談、土日歓迎)

Yohei Komori

行政書士
基本情報技術者
J.S.A. ワインエキスパート
古森洋平 Yohei Komori

080-6521-1647

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参考法令・資料

  1. 事業環境変化に対応した経営基盤強化事業【助成金 募集要項(小規模事業者向けアシストコース)】
  2. 東京都中小企業振興公社