東京都創業助成金のスケジュール・要件・対象経費|行政書士・元銀行員がわかりやすく解説
【2025年9月3日作成】
東京都の創業助成金(創業助成事業)は、都内の開業率を高め、創業初期の事業を確実に立ち上げ・定着させることを目的に、都内で創業予定または創業後5年未満の個人・法人等が負担する初期コストの一部を支援する制度です。 本稿では、助成金の目的、スケジュール、助成対象経費、申請要件などの主要ポイントについて、銀行および投資銀行での勤務経験を有する行政書士・古森(こもり)が、実務的な観点からわかりやすく解説します。
当事務所と提携先の行政書士藤原七海事務所(あわせて、なないろバックオフィス)では、東京都の創業助成金(創業助成事業)のほか、小規模事業者持続化補助金(創業型)の支援実績もございます。 両名とも東京都行政書士会所属です。

2025年(令和7年度)第2回公募のスケジュール
東京都の創業助成金(創業助成事業)は、国の電子申請システム「jGrants」を通じて申請します。 2025年(令和7年度)第2回公募の主なスケジュールは次のとおりです。 具体的な手続や必要書類は、募集要項および電子申請マニュアル(9月中旬公開予定)をご確認ください。
- 申請受付期間: 2025年9月29日(月)〜10月8日(水)
- 審査フロー: 書類審査 → 面接審査
- 交付決定(予定): 2026年3月1日
- 助成対象期間: 交付決定日から6か月以上2年が経過する日まで
(最短:2026年8月31日/最長:2028年2月29日) - 中間払の利用: 助成対象期間開始から6か月経過後に申請可

中間払とは
中間払は、助成対象期間の開始日から6か月経過後に申請でき、期間内にすでに支払済の助成対象経費について一部精算を受けるための手続きです。残額は事業完了後の完了後払で精算します。 国の補助金では、ものづくり補助金にも類似の概算払という制度があります。小規模事業者持続化補助金にはない規定です。
GビズID / 電子申請の準備
申請にはGビズIDプライム(jGrantsログイン用)の取得が必要です。 詳しくは電子申請マニュアルはご覧ください。
スケジュール上の注意事項
・交付決定前に契約・発注・購入した経費は助成対象外です。
・助成対象となるのは、助成対象期間内に「契約・履行・支払」が完了したものに限られます。
・本助成金は後払い(中間払・完了後払)であり、同一経費での重複助成は不可です。
・申請は電子申請(jGrants)のみで、紙提出はできません。
申請の要件
東京都創業助成金の申請には、「申請者の区分」「事業実施条件」「創業支援事業の利用」 「申請手続に関する条件」など、複数の要件を満たす必要があります。以下は募集要項の要点を整理したものです。
申請できる方(申請者区分)
申請者区分 | 主な条件・該当例 |
---|---|
創業予定者 | 都内で事業開始予定で、交付決定までに開業届の提出または法人登記を完了し、都内で実質的に事業を行うこと |
創業後5年未満の個人・法人 | 都内で事業を営む個人事業主または法人(代表者)で、創業から5年未満であること |
特定非営利活動法人 等 | 都内での活動実態があり、募集要項が定める法人種別・条件に合致すること |
事業実施に関する要件(共通)
- 都内で実質的に事業を継続して行うこと(バーチャルオフィスやシェア・コワーキングは、実態が伴う場合のみ可)
- 助成対象経費は、助成対象期間内に契約・履行・支払が完了する見込みで計画すること
- 同一経費について、他の国・都・区市町村等の補助・助成と重複させないこと
創業支援事業の利用に関する要件
募集要項で指定された創業支援事業のいずれかを、所定の期間・回数・方法で利用していることが申請の必須要件になります。 利用実績は、受講修了証や参加証明、相談記録などの証憑で確認されます。
- 対象となる創業支援事業は公社・都・区市町村・金融機関・大学等が実施する複数のメニューから選べます。
- それぞれに「利用時期」「必要回数・時間」「提出物」など細かな条件があります。該当メニューを選び、証憑が揃う形で計画してください。
東京都の創業助成金で対象となる創業支援事業の一覧
創業支援事業名 | 運営主体 | 利用要件(回数・期間・提出物など) | 証憑書類(例) | 主な該当者 |
---|---|---|---|---|
① プランコンサルティング(事業計画作成) | 東京都中小企業振興公社(TOKYO創業ステーション丸の内/TAMA) | 事業計画書策定支援を修了し、過去3か年内の証明取得 | 利用・修了証明 | 創業予定者/創業後5年未満 |
② 東京シニアビジネスグランプリ(事業評価) | 東京都中小企業振興公社 | 過去3か年度内にファイナリスト | 入賞・進出証明 | シニア起業等 |
③ 事業可能性評価事業(事業評価) | 東京都中小企業振興公社 | 当年度または過去3か年度内に「可能性あり」評価+継続支援 | 評価結果通知 等 | 全般 |
④ 商店街開業プログラム(若手商人育成事業) | 東京都中小企業振興公社 | 当年度または過去3か年度内に受講修了 | 修了証 | 小売・商店街での創業等 |
⑤ 都・公社設置の創業支援施設 入居 | 東京都/東京都中小企業振興公社(TCIC・SSAC・TAMA等) | 現在または過去に入居 | 入居契約書/在籍証明 | 全般 |
⑥ 都認定インキュベーション施設 入居 | 東京都認定インキュベーション施設 | 認定後(新設は運営開始後)6か月以上継続入居+IMの継続支援 | 入居証明/支援記録 | 全般 |
⑦ 公的・金融・大学等の創業支援施設 入居 | 中小機構/区市町村/地銀・信金・信組/国公私立大学 等 | 都内施設と1年以上の賃貸借契約で入居(過去3年内の入居含む) | 賃貸借契約書/入居証明 | 全般 |
⑧ SSAC アクセラレーションプログラム | 青山スタートアップアクセラレーションセンター | 受講中または受講歴あり | 受講証明/修了証 | 全般(成長志向) |
⑨ TCIC アクセラレーション/Ideation Program | 東京コンテンツインキュベーションセンター(TCIC) | いずれかに採択 | 採択通知 | コンテンツ・クリエイティブ等 |
⑩ TOKYO Co-cial IMPACT スタジオプログラム | TOKYO Co-cial IMPACT | 採択 | 採択通知 | ソーシャル・インパクト |
⑪ TOKYO STARTUP GATEWAY(事業評価) | 東京都 | 過去3か年度内にセミファイナリスト | 進出証明 等 | アイデア段階〜初期 |
⑫ APT Women(東京都女性ベンチャー成長促進) | 東京都 | 国内アクセラレーションプログラムを受講中/受講歴あり | 受講証明 | 女性起業 |
⑬ 女性・若者・シニア創業サポート(1.0/2.0) | 取扱金融機関 | 当該事業の融資を受け、証明を取得(繰上完済済でも可) | 融資実行/取組証明 | 資金調達を伴う創業 |
⑭ 東京都中小企業制度融資(創業融資) | 東京都(制度設計)/金融機関 | 創業融資の利用 | 融資実行通知 等 | 資金調達を伴う創業 |
⑮ 区市町村の制度融資(創業者向け・保証付) | 各区市町村/東京信用保証協会 等 | 創業者対象の保証付制度融資を利用 | 保証承諾書/融資実行書類 | 資金調達を伴う創業 |
⑯ 東京都出資のVCファンドからの出資等 | 都出資ファンド(運営者) | 出資等を受けている | 出資契約書 等 | スタートアップ全般 |
⑰ 政策金融機関の資本性劣後ローン(創業) | 政策金融機関 | 資本性劣後ローン(創業)を利用 | 融資契約書 等 | スタートアップ全般 |
⑱ 認定特定創業支援事業(法認定) | 都内区市町村 | 支援を受け、過去3か年内に区市町村長の証明取得 | 証明書 | 創業予定者/創業後5年未満 |
⑲ 準ずる支援(商工会議所・信保協・商工会連合会・BusiNest) | 東京商工会議所/東京信用保証協会/東京都商工会連合会/中小企業大学校東京校BusiNest | 各機関の支援を受け、過去3か年内に証明取得 | 証明書 | 創業予定者/創業後5年未満 |
⑳ 高校生起業家養成プログラム | 東京都 | 過去3か年度内に「養成講座」を修了 | 修了証 | 高校生(将来の創業) |
まだ要件を満たしていない場合
直近で指定創業支援事業の利用実績がない方は、選択肢の一つとして⑭ 東京都中小企業制度融資(創業融資)の活用が検討しやすいです。取扱金融機関が広く、通年で相談・申込みができるため、 他のプログラム(募集期間・採択があるもの等)に比べ、スケジュールを組みやすいという実務上のメリットがあります。
- 前提として与信審査があり、事業計画・自己資金・信用情報等の条件を満たす必要があります。
- 融資実行後、募集要項で定められた形式の証明書類を取得し、申請に添付します。
- 申請期限に間に合うよう、金融機関への事前相談・必要書類の準備を早めに進める必要があります。
補助の上限額と補助率
東京都創業助成金の助成率は対象経費の2/3以内です。 総額の上限は400万円、下限は100万円です。内訳の上限である「事業費+従業員人件費」で最大300万円、 「委託費(市場調査・分析費)」で最大100万円の範囲で組み合わせます。
区分 | 主な内容 | 助成率 | 上限額 | 備考 |
---|---|---|---|---|
1.総額 | 本助成金で申請できる合計額 | 対象経費の2/3以内 | 上限 400万円(下限 100万円) | 内訳の合算がこの範囲内であること |
2.事業費+従業員人件費 | 賃借料、広告費、器具備品購入費、産業財産権出願・導入費、専門家指導費、従業員人件費 など | 上限 300万円 | 総額の上限(400万円)と併せて管理 | |
3.委託費(市場調査・分析費) | 外部委託による市場調査・データ分析 等 | 上限 100万円 | 「事業費+人件費」と合算して総額上限内に収める |
注意:本助成金は後払い(中間払・完了後払)方式です。申請時の見積に基づく計画額に対し、 実績精算で確定します。具体的な対象品目や計上ルールは募集要項の各経費区分の定義に従ってください。
対象経費の区分と範囲
本助成金で対象となる費用は、3つに分かれます。日々の運営に使う「事業費」、雇用にかかる「従業員人件費」、そして外部に調査を依頼するための「委託費(市場調査・分析)」です。
1)事業費
- 主な内訳として、賃借料(オフィス・店舗等)、広告費、器具備品購入費、産業財産権の出願・導入費、専門家指導費などが含まれます。
- 賃借料などの継続費用は、助成対象期間に対応する月分のみを計上します。
2)従業員人件費
- 雇用契約に基づいて支払う従業員の給与等が対象になります。助成対象期間内に支払済である必要があります。
- 給与台帳や賃金台帳、勤怠・給与振込の記録など、支払実績を客観的に示す資料を整えておくことが求められます。
3)委託費(市場調査・分析)
- 外部への「市場調査・データ分析」等に限定され、上限は100万円です。
- 委託先との契約内容(調査の目的・成果物・対価・納期等)を明確にする必要があります。
- 制作・開発・運用などの外注は、性質に応じて事業費に該当する場合があります。計上区分は、契約内容と募集要項の定義に照らして判断します。
区分の使い分け・計上と精算の注意点
- 助成率はすべて対象経費の2/3以内です。「事業費+従業員人件費」は上限300万円、「委託費(市場調査・分析)」は上限100万円で、合計の上限は400万円(下限100万円)となります。
- 助成対象となるのは、助成対象期間内に契約・履行・支払がすべて完了した経費です(分割支払の場合も期間内に全額支払済である必要があります)。
- 交付決定前に発注・契約・購入したものは対象外です。
- 同一経費で国・都・区市町村等の他制度と重複して助成を受けることはできません。
- 計上する経費は、都内での事業活動に必要かつ妥当な範囲な範囲のみが対象です。
- 本助成金は後払いです(中間払・完了後払)。契約書・請求書・納品/検収・領収書・振込明細などの証憑を適切に保存してください。
まとめ
東京都創業助成金の申請では、要件に沿いつつ、制度の目的(都内の開業を促進し、創業初期の事業を立ち上げ・定着させること)を踏まえた事業計画と対象経費の内訳(経費計画)を策定して申請することが重要です。 また、指定創業支援事業の利用などの申請要件を満たすことに加え、採択に向けては、本稿で紹介した必要書類をきっちり揃え、審査で評価されるポイントを押さえることが重要です。 筆者は、銀行および投資銀行での勤務経験を持つ行政書士として、一貫性のある財務データに裏付けられたストーリー性のある事業計画の作成を得意としています。
また、当事務所では、当事務代表と同様に知識と経験が豊富な提携先の行政書士と共同で、単独受任時と変わらない報酬体系での支援も行っています(なないろバックオフィス)。 東京都創業助成金(創業助成事業)の支援実績も豊富です(小規模事業者持続化補助金〔創業型〕の支援実績もございます)。
とくに「初めてで不安」、「申請書をうまく作れない」と感じている方は、お気軽にご相談ください。 LINE・フォーム・お電話から、初回無料でご相談いただけます。安心・確実な申請をご支援いたします。
提携先:行政書士藤原七海事務所
参考法令・資料
- 東京都創業助成事業 令和7年度(第2回)募集要項(公益財団法人東京都中小企業振興公社)
- TOKYO創業ステーション「申請要件(指定創業支援事業)」ページ
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行政書士
基本情報技術者
J.S.A. ワインエキスパート
古森洋平 Yohei Komori
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