小規模事業者持続化補助金における加点、銀行出身の行政書士が解説します

【2025年7月21日作成】
中小企業庁が実施する「小規模事業者持続化補助金<一般型 通常枠>」は、物価高騰や人件費の上昇、インボイス制度への対応など、制度・経営環境が大きく変化する中で、地域を支える小規模事業者の販路開拓や業務効率化の取り組みに対して、その経費の一部を補助する制度です。 本稿では、小規模事業者持続化補助金の加点項目について、銀行および投資銀行での勤務経験を有する行政書士・古森(こもり)が、実務的な観点からわかりやすく解説します。 なお、当事務所と提携先の行政書士藤原七海事務所(あわせて、なないろバックオフィス)では、小規模事業者持続化補助金の支援実績が多数ございます。

小規模事業者持続化補助金 第18回公募 ― 要件、経費経費、申請のポイントを詳しく解説

小規模事業者持続化補助金では、加点は最大2種類までとされています。 具体的には、次の2つの属性からそれぞれ1種類ずつ選ぶ形式です:

  • 重点政策加点 から1種類
  • 政策加点 から1種類

どちらかの区分から2種類以上を選択してしまうと、加点審査の対象外となるため、選択には十分な注意が必要です。 このように、複数の加点を積み上げられる「ものづくり補助金」などの他の補助金とは異なり、加点の取り扱いに制限がある点が本補助金の特徴です。 先に政策加点から説明いたします。

賃金引上げ加点

小規模事業者持続化補助金の「賃金引上げ加点」とは、最低賃金の引上げが行われる中、それに加えてさらに自社の従業員の事業所内最低賃金を30円以上引き上げる事業者に対して、政策的観点から審査時に加点される制度です。【政策加点】の1つです。

加点を受けるための条件

  • 補助事業終了時点において、事業場内最低賃金が申請時より30円以上上昇していること
  • 申請時点に従業員が在籍していること(申請時点において、従業員がいない場合は、本加点の対象外です)
  • 在籍している従業員が、地域別最低賃金を下回っていないこと
  • 短期・季節労働者(日雇い、2か月以内の雇用契約、季節雇用〈4か月以内〉など)は除外
  • 退職済みの従業員は対象外

重要な注意点

補助事業終了時に賃金引上げが確認できない場合、補助金は交付されません。 加点だけでなく、補助そのものが無効となる重大な条件です。

地方創生型加点

地方創生型加点とは、地域に根ざした事業や地域課題の解決に貢献する事業に対して、政策的観点から加点を行う制度です。 この加点は、小規模事業者持続化補助金の【政策加点】の一つです。

対象となる2つの類型

  • ① 地域資源型:地域で生産されているモノやサービスなどの地域資源を活用し、地域外への販売や新事業の立ち上げにより付加価値向上を図る取組。
    • 地元産品を使った新商品を開発し都市部に販路を広げる
    • 伝統工芸を活用して海外市場へ展開する
  • ② 地域コミュニティ型:地域住民の生活に密着したサービスを提供し、地域の課題解決や実需に応える取組。
    • 高齢者向けの宅配サービス
    • 地元住民向けの子育て支援事業

ポイント

  • 両方を選択することはできず、どちらか1つのみが加点対象です
  • 経営計画欄に、いずれかの類型に該当する取組内容を具体的に記載します (内容が曖昧だと加点が認められない可能性があります)
  • 地域の特性や課題をきちんと把握していることが計画から読み取れるようにします

経営力向上計画

小規模事業者持続化補助金の加点:経営力向上計画

経営力向上計画加点とは
「経営力向上計画加点」は、中小企業等経営強化法に基づく「経営力向上計画」の認定を受けた事業者に対し、小規模事業者持続化補助金の審査において政策的観点から加点を行う制度です【政策加点】。 この計画は、人材育成・設備投資・コスト管理など、企業が自らの経営力を高めるための取組をまとめたもので、国の認定を受けることで補助金だけでなく税制や金融面での支援も受けられます。

「経営力向上計画」は、自社の経営改善を目的とした計画で、次のような内容を含みます:

  • 経営課題の整理と現状分析
  • 経営力を高めるための取組(人材育成、設備投資、新サービス展開など)
  • 労働生産性などの経営指標の目標設定

加点対象となるための要件
この加点を受けるには、以下の条件を満たす必要があります。

  • 各受付締切回の基準日までに「経営力向上計画」の認定を受けていること
  • 申請時に「経営力向上計画の認定書の写し」を提出すること

※「申請中」や「基準日以降に認定された」場合は加点対象となりませんので注意してください。

認定を受けることによる主なメリット

  • 税制優遇:設備投資にかかる即時償却など
  • 金融支援:政策金融機関による融資や信用保証の特例
  • 法的支援:許認可の承継特例など
  • 補助金審査時の加点や、他の補助制度での優先採択対象となることもあります

事業承継加点

「事業承継加点」は、代表者が高齢であり、後継者に事業を引き継ぐ準備を進めている事業者に対して、小規模事業者持続化補助金の採択審査で政策的観点から加点が行われる制度です。 具体的には、申請時点で代表者の年齢が満60歳以上であり、かつ後継者候補が補助事業を中心になって実施する計画であることが条件となります。 高齢経営者が円滑に事業を引き継ぎ、中小企業の持続的な発展を促す目的で設けられている加点【政策加点】です。

加点対象となるための要件

加点を受けるには、次の2点をすべて満たす必要があります:

  • 代表者が満60歳以上であること(基準日時点)
  • 後継者候補が補助事業の中心的な担い手であること

ポイント

後継者が補助事業の中心的実施者であることを示すために、具体的な関与内容を計画書に記載することが重要です。 地域の商工会・商工会議所との連携が必要ですので(様式10の発行)、早めに相談・依頼を行いましょう。

過疎地域加点

「過疎地域加点」は、人口減少や高齢化などにより経営環境が非常に厳しい地域(過疎地域)で、販路開拓などに意欲的に取り組む小規模事業者を支援するための加点制度です。 対象となるのは、「過疎地域の持続的発展の支援に関する特別措置法」に定められた過疎地域に所在地がある事業者です。地域経済の維持・発展に資する事業計画であれば、加点【政策加点】が認められます。

加点対象となるための要件

以下の2つを満たすことが必要です:

  • 事業所の所在地が、法で定める過疎地域にあること
  • 地域経済の持続的発展につながる取組を行うこと

ポイント

地域の課題に根差した事業や、雇用維持・地域資源の活用など、地域への貢献が明確に示された計画が評価されやすくなります。 地域内外への販路開拓や新サービスの提供など、持続的発展に結びつく事業内容を意識しましょう。

一般事業主行動計画

「一般事業主行動計画策定加点」は、従業員100人以下の事業者のうち、女性活躍推進法または次世代育成支援対策推進法(次世代法)に基づく行動計画を策定・公表している事業者を対象に、採択審査時に加点【政策加点】される制度です。

対象となるのは、以下のいずれかを満たす事業者です:

  • 「女性の活躍推進企業データベース」に、女性活躍推進法に基づく一般事業主行動計画を公表している事業者
  • 「両立支援のひろば」に、次世代法に基づく一般事業主行動計画を公表している事業者

※両制度とも、計画期間内に「公募締切日」と「補助事業終了予定日」の両方が含まれている必要があります。

加点対象となるための注意点

後述の「くるみん・えるぼし加点」(重点政策加点)を選択している場合は、本加点(一般事業主行動計画策定加点)は加点対象外です。

小規模事業者卒業加点

「小規模事業者卒業加点」は、事業の成長と規模拡大を目指す小規模事業者に対して、政策的観点から加点される仕組みです【政策加点】。補助事業の実施を通じて、小規模事業者の定義を超える従業員数に達すること(=卒業)が加点の条件です。

加点の要件

補助事業の終了時点で、常時使用する従業員数が以下の上限を超えている必要があります:

業種小規模事業者の定義卒業加点の条件
商業・サービス業(宿泊業・娯楽業除く)5人以下6人以上
宿泊業・娯楽業20人以下21人以上
製造業・その他20人以下21人以上

加点対象となるための注意点

  • 補助事業終了後にこの要件を満たさない場合は、交付決定されていても補助金は支払われません。
  • 過去に「卒業枠」や「卒業加点」で採択され事業を実施した事業者は、本補助金の対象外です。

事業継続力強化計画(BCP)認定

ものづくり補助金の加点:  事業継続力強化計画認定

事業継続力強化計画(BCP)認定制度は、自然災害や感染症などのリスクに備えた防災・減災の事前対策を企業が計画としてまとめ、経済産業大臣が 認定する制度です。中小企業向けの取り組みやすい簡易版BCPと位置づけられ、 認定企業は税制・金融支援や補助金審査での加点を受けられます。小規模事業者持続化補助金では【政策加点】です。

加点の要件

事業継続力強化計画指針に従い、次の5項目を所定様式にまとめる必要があります。。
  1. ハザードマップ等によるリスク把握
  2. 従業員の安否確認・初動体制の整備
  3. 資金・設備・データを守る事前対策
  4. 災害発生時の事業継続行動計画(代替拠点・代替調達 等)
  5. 訓練・教育とPDCAによる計画の実効性確保
取得までの期間
  • 申請は随時受付(通年)
  • 標準処理期間は約45日(審査~認定決定)
  • 計画の実施期間は最大3年間。満了後は新たな計画で再申請が必要です。
主なメリット
  • 防災・減災投資に対する特別償却(15%)などの税制優遇
  • 日本政策金融公庫・信用保証協会による低利融資・保証枠拡大
  • 小規模事業者持続化補助金以外にも、ものづくり補助金中小企業新事業進出補助金などで加点対象
  • 認定ロゴを活用した防災意識の高い企業としてのPRが可能

事業継続力強化計画(BCP)認定については、下記の私の記事で詳しく解説しています。宜しければご覧になってみてください。

事業継続力強化計画(BCP計画)認定制度を行政書士が解説

赤字賃上げ加点

「赤字賃上げ加点」は、赤字であっても従業員の賃上げに取り組む意欲的な事業者を対象に、採択審査時に政策的観点から加点を行う制度です【重点政策加点】。 さらに、補助率も通常の2/3から3/4へ引き上げられるメリットがあります。

対象となる事業者(要件)

この加点を受けるには、「賃金引上げ特例」に該当することに加え、直近の決算が赤字であることが必要です。具体的には次のとおりです。

  • 法人の場合:法人税申告書の別表一・別表四における「所得金額又は欠損金額」がゼロ以下
  • 個人事業主の場合:確定申告書(第一表)の「課税される所得金額」がゼロ以下
加点と補助率の関係
赤字賃上げの要件を満たして選択した場合、以下が自動的に適用されます。政策加点と重点政策加点は最大でそれぞれ1つですので、加点はこちらで完結します。
  • 賃上げ加点【政策加点】
  • 赤字賃上げ加点【重点政策加点】
  • 補助率3/4への引き上げ

事業環境変化加点

「事業環境変化加点」は、ウクライナ情勢や原油価格、LPガス価格等の高騰による影響を受けている事業者に対して、採択審査時に政策的観点から加点がなされる制度です。 小規模事業者持続化補助金の【重点政策加点】の一つとして位置づけられています。

東日本大震災加点

「東日本大震災加点」は、東京電力福島第一原子力発電所の事故によって現在も厳しい経営環境に置かれている事業者や、処理水に伴う風評被害の克服に取り組む水産事業者を対象に、採択審査時に政策的観点から加点を行う制度です【重点政策加点】。 この加点は、震災から長期間が経過した今なお、地域復興・風評払拭に向けた取り組みを支援するものであり、対象地域・業種が明確に限定されています。該当する事業者は、必ず証明書類を添付し、正しく手続きを行いましょう。

えるぼし認定(女性活躍推進企業)

ものづくり補助金の加点:えるぼし認定

えるぼし認定は、女性活躍推進法に基づき、女性の活躍推進に優れた企業を厚生労働大臣が認定する制度です。取り組み状況に応じて★1〜3段階と最上位のプラチナえるぼしの計4段階があり、自社が達成した基準項目の数によって認定ランクが決まります。小規模事業者持続化補助金では、えるぼし認定の加点、くるみん認定の加点、一般事業主行動計画の加点は重複して受けられず、加点はいずれか1つを選ぶ必要があります。

認定要件: まず女性活躍推進法に基づく一般事業主行動計画を策定・届出し、女性の登用や継続就業に関する自社の数値目標を定めます。その上で、以下の認定基準項目(厚労省が定める評価項目)のうち一定数以上を満たす必要があります。
・採用: 新卒や中途採用における女性比率
・継続就業: 女性の勤続年数、離職率
・労働時間等: 時間外労働の状況や有給取得率
・管理職比率: 女性管理職の割合
・多様なキャリアコース: 女性の配置やキャリア形成の取組み など

上記5分野で定められた基準のうち、★1なら2項目以上、★2は3項目以上、★3は5項目全てを満たすことが求められます(プラチナえるぼしはさらに高水準の要件)。要件充足後、労働局へ申請書と実績データを提出して審査を受けます。

えるぼし認定は、小規模事業者持続化補助金のみならず、ものづくり補助金、中小企業新事業進出補助金においても加点にもなります。

くるみん認定(次世代育成支援認定企業)

ものづくり補助金の加点:くるみん認定

くるみん認定は、次世代育成支援対策推進法(次世代法)に基づき、子育てサポート企業として厚生労働大臣から認定を受ける制度です。企業が従業員の仕事と子育ての両立支援に積極的に取り組み、一定の要件を満たした場合に「くるみんマーク」を付与されます。小規模事業者持続化補助金では、えるぼし認定の加点、くるみん認定の加点、一般事業主行動計画の加点は重複して受けられず、加点はいずれか1つを選ぶ必要があります。

認定要件: まず次世代法に基づく一般事業主行動計画を策定し、社内周知・外部公表したうえで、計画を都道府県労働局に届け出ます。計画期間中に育児支援のための目標を実施・達成し、その結果を踏まえて労働局へ認定申請を行います。認定基準として、計画目標の達成に加え、育児休業の取得状況や所定外労働の削減など複数の条件があります。例えば「育児休業取得率○%以上」や「所定外労働時間の上限設定」等、企業規模に応じた基準をクリアする必要があります。

プラチナくるみんはくるみん認定のより上位の認定なので、要件を満たしますが、くるみん認定より認定のハードルが低いトライくるみん認定では、加点要件を満たさないと考えられます。関連し、くるみん認定は、小規模事業者持続化補助金のみならず、ものづくり補助金、中小企業新事業進出補助金においても加点にもなります。

加点項目と取得までの期間の目安

下記は各加点項目を取得するまでに要する期間をまとめた表ですが、過疎地域加点や東日本大震災加点など対象が限定されるものを除くと、事業計画に組み込める場合には賃上げ加点と地方創生型加点を狙うのが比較的容易です。それが難しい場合には、経営力向上計画と事業継続力強化計画を取得するほうが相対的に取り組みやすいでしょう。

No.加点項目取得までの期間
1賃上げ加点(+30円)事業計画に織り込む
2地方創生型加点(地域資源型/地域コミュニティ型)経営計画に反映・即時
3経営力向上計画1.5~2か月(申請・認定)
4事業承継加点準備~様式10取得で数日~1週間
5過疎地域加点所在地が過疎地域であれば即適用
6一般事業主行動計画策定加点届出+掲載後すぐに対象
7小規模事業者卒業加点補助事業終了時点で確認
8事業継続力強化計画(BCP)認定約1.5か月(審査45日)
9赤字賃上げ加点事業計画に織り込む+申告書添付
10事業環境変化加点即時(影響の根拠を申請時に記載)
11東日本大震災加点該当地域であれば即対象(許可証添付)
12えるぼし認定半年~数年+審査1~2か月
13くるみん認定2~3年(計画終了+審査1~2か月)

まとめ

小規模事業者持続化補助金の申請では、要件に沿いつつ、生産性向上など制度の目的も考慮した事業計画を策定して申請することが重要です。 また、他の補助金と比較すると申請の要件が厳しくはないので、採択に向けては、本稿で紹介した加点の取得も重要です。 筆者は、銀行および投資銀行での勤務経験を持つ行政書士として、一貫性のある財務データに裏付けられたストーリー性のある事業計画の作成を得意としています。

また、当事務所では、当事務代表と同様に知識と経験が豊富な提携先の行政書士と共同で、単独受任時と変わらない報酬体系での支援も行っています(なないろバックオフィス)。 小規模事業者持続化補助金の支援実績も豊富です。

とくに「初めてで不安」、「申請書をうまく作れない」と感じている方は、お気軽にご相談ください。 LINE・フォーム・お電話から、初回無料でご相談いただけます。安心・確実な申請をご支援いたします。

提携先:行政書士藤原七海事務所

参考法令・資料

  1. 小規模事業者持続化補助金<一般型> 第18回公募 公募要領(第3版)

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Yohei Komori

行政書士
基本情報技術者
J.S.A. ワインエキスパート
古森洋平 Yohei Komori

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