小規模事業者持続化補助金 事業計画書の書き方と審査のポイント|行政書士・元銀行員がわかりやすく解説
【2025年8月22日更新】
中小企業庁が実施する「小規模事業者持続化補助金<一般型 通常枠>」は、物価高騰や人件費の上昇、インボイス制度への対応など、制度・経営環境が大きく変化する中で、地域を支える小規模事業者の販路開拓や業務効率化の取り組みに対して、その経費の一部を補助する制度です。
小規模事業者持続化補助金の申請において、「様式2:事業計画書」は単なる提出書類ではなく、「審査される」書類です。 本稿では、銀行および投資銀行での勤務経験を有する行政書士の古森洋平が、公募要領の審査基準をもとに、採択に向けた事業計画書の書き方と審査のポイントを、各項目ごとに解説します。 筆者は、法律を専門とする行政書士として活動しつつ、経済学部出身で日本証券アナリスト協会の認定アナリストの資格も有しておりますので、本稿は企業分析や経営学のフレームワークも踏まえた記事となっています。
なお、当事務所と提携先の行政書士藤原七海事務所(あわせて、なないろバックオフィス)では、小規模事業者持続化補助金を含む補助金の支援実績が多数ございます。

小規模事業者持続化補助金(第18回公募)の申請要件、スケジュール、対象経費、その他申請のポイントについては、私の下記の記事で詳しく解説しています。
小規模事業者持続化補助金 第18回公募 ― 要件、スケジュール、対象経費、申請のポイントを行政書士が詳しく解説事業計画書の構成
事業計画書は、大きく「経営計画」と「補助事業計画」に分かれます。それぞれ、4つの項目に分かれます。
経営計画
- 企業概要(最大12,000字)
- 顧客ニーズと市場動向(最大8,000字)
- 自社や自社の提供する商品・サービスの強み・弱み(最大4,000字)
- 経営方針・目標と今後のプラン(最大8,000字)
補助事業計画
- 補助事業で行う事業名(最大30字)
- 販路開拓等の取組内容(最大12,000字)
- 業務効率化(生産性向上)の取組内容(最大8,000字)
- 補助事業の効果(最大8,000字)
1.企業概要
「事業計画書 - 経営計画」の始めの項目は「企業概要」です。最大12,000字で説明します。企業概要は、次の3つのパートに分かれており、それぞれ最大4,000字で説明します。企業概要は、次の3つのパートに分かれており、それぞれ最大4,000字で説明します。
「1.1自社の概要」の部分は、現在の事業を漏れなく、かつわかりやすく記載することがポイントです。「1.2現在の売上・利益の状況」は、補助事業の実施によってこれらが伸びるストーリーの土台になります。正確に事実を記載します。 また、小規模事業者持続化補助金は、販路開拓や業務効率化による生産性向上を目的とした取り組みを支援する制度です。 そのため、「1.3経営課題の内容」をこれらの目的に沿った記載とすることが重要です。
- 1.1自社の概要(最大4,000字)
- 1.2現在の売上・利益の状況(最大4,000字)
- 1.3経営課題(最大4,000字)
下記は、企業概要を入力する申請画面です。重要な部分を太字にしたり、段落を付けることも可能です。 また、画像や表も挿入することができ、カウントされる文字数の目安は、画像が1枚150文字程度、表が300文字程度となります。 画像はまとめて1つのファイルとすることで文字数の節約が可能となります。

2.顧客ニーズと市場動向
「事業計画書 - 経営計画」の2つ目の項目は「顧客ニーズと市場動向」です。最大8,000字でまとめます。公募要領で、具体的な分析の枠組みへの言及はありませんが、この部分はマーケティング理論の3C分析でいう「市場・顧客(Customer)」と「競合(Competitor)」にあたります。 また、経営学のフレームワークであるSWOT分析の中で、「機会(Opportunities)」と「脅威(Threats)」という視点から考えることも、とても有効です。
「2.1市場の動向」では、自社の市場を適切に定め、市場の規模、市場の成長率、競争環境(競合)の3点を軸に構成します。定量的なデータで分析することがポイントです。 続いて「2.2顧客ニーズ」については、顧客ニーズを捉えた計画(補助事業計画)であることが審査項目になっていますので、顧客の目線でニーズを分析・記載することが重要です。SWOT分析の機会(Opportunites)の視点も意識します。
- 2.1市場の動向(最大4,000字)
- 2.2顧客ニーズ(最大4,000字)
申請画面は先ほどの企業概要と同じです。

3.自社や自社の提供する商品・サービスの強み・弱み
3つ目は「自社や自社の提供する商品・サービスの強み・弱み」です。最大4,000字でまとめます。 前述の「企業概要」とあわせて、マーケティング理論の3C分析でいう「自社(Company)」にあたります。 また、SWOT分析の「強み(Strengths)」と「弱み(Weaknesses)」そのものであり、小規模事業者持続化補助金の事業計画書の項目は、SWOT分析を意識した構成となっていることが読み取れます。
- 3.自社や自社の提供する商品・サービスの強み・弱み(最大4,000字)
「強み・弱み」の適切な把握は審査項目と明示されており、とくに重要です。申請画面は先ほどの企業概要と同じです。

4.経営方針・目標と今後のプラン
「事業計画書 - 経営計画」の最後の項目は「経営方針・目標と今後のプラン」です。それぞれを4,000字、最大8,000字でまとめます。 現在の事業と申請する補助事業計画が「経営方針・目標と今後のプラン」に合致していることが主な審査の観点となります。 さらに、小規模事業者持続化補助金は販路開拓や業務効率化を目的としており、賃上げも政策的な狙いとして示されています。そのため、「経営方針・目標と今後のプラン」はこれらの補助金の目的や方向性に合致していることが大切です。 前段の「経営方針・目標」は、おおむね3〜5年の中期的な視点で書きます。
一方、「今後のプラン」は1〜2年程度の短期的な計画をまとめ、補助事業計画を含めた時間軸で記載することがポイントです。
- 4.1経営方針・目標(最大4,000字)
- 2.2今後のプラン(最大4,000字)

申請画面は他の項目と同じです。

以上が、事業計画書の前半の「経営計画」です。後段は「補助事業計画」について記載します。
1.補助事業で行う事業名
「補助事業計画」の最初の項目は、「補助事業で行う事業名」の記入です。ここでいう補助事業とは、補助金を活用して実施する具体的な取り組みを指します。 新しい事業である必要はなく、既存事業の延長線上にある「販路開拓」や「業務効率化」の取組であれば対象となります。 30文字以内で記載します。なお、申請が採択された場合、この事業名は公表されますので、公開されても差し支えのない内容としましょう。
- 1.補助事業で行う事業名(最大30字)

2.販路開拓等の取組内容
小規模事業者持続化補助金は、事業者の販路開拓等の取組を支援することを目的とした制度です。そのため、販路開拓に関する取組内容の記載は、審査において最も重要なポイントの一つとなります。 この欄は最大12,000字で、3つの構成要素に分かれており、申請者の考える施策を具体的に記述する必要があります。
審査員に対して、補助金を使った取組が、実際に販路拡大に結びつくと納得させられる内容にすることが求められます。 そのため、取組の説明は抽象的な表現を避け、具体性と実現可能性をもって記述することがポイントです。 また、2.3具体的な取組では、別途申請画面で入力する経費明細書に記載する各経費の内容について、審査員に分かりやすく書くことも重要です。
- 2.1事業の概要(最大4,000字)
- 2.2背景・目的(最大4,000字)
- 2.3具体的な取組(最大4,000字)

画面の下部には「販路開拓とあわせて行う業務効率化(生産性向上)の取組はありますか?」という質問項目があります。 小規模事業者持続化補助金は、販路開拓に関する取組のみでも申請可能ですが、業務効率化(生産性向上)も補助金の目的の一つとされています。 そのため、補助事業の内容と対象経費が業務効率化に繋がるものであれば、この項目の記載をすることで採択の可能性が高まると考えられます。可能な限り具体的に記入するようにしましょう。
3.業務効率化(生産性向上)の取組内容
小規模事業者持続化補助金は、事業者による販路開拓等の取組に加えて、業務効率化(生産性向上)の取組も支援対象としています。 この欄では、最大8,000字の範囲で、申請者が考える具体的な施策を記載する必要があります。内容は2つの構成要素に分かれており、それぞれに沿って記述を進めます。
また、業務効率化は、審査で重視される「賃金の引上げ」とも関係が深いため、審査上でも非常に重要な要素です。 取り組みが複数ある場合は、それぞれを分けて記載します。
- 3.1背景・目的(最大4,000字)
- 3.2具体的な取組(最大4,000字)

4.補助事業の効果
4.補助事業の効果は、小規模事業者持続化補助金の事業計画書の最後の記載項目です。 ここでは、2.販路開拓等の取組内容および3.業務効率化(生産性向上)の取組内容で記載した施策が、どのような成果につながるのかを説明します。 販路開拓や業務効率化の効果が、補助金の目的に合致していることを、審査員に対して具体的かつ分かりやすく示すことが重要です。 この欄は最大8,000字で、2つの部分に分かれており、特に後半の4.2効果の試算では、可能な限り定量的な数値による試算を行うことが評価のポイントとなります。
- 4.1取組の効果(最大4,000字)
- 4.2効果の試算(最大4,000字)

以上が、小規模事業者持続化補助金における「事業計画書」の全体像です。
申請において、残された重要な記載項目としては、以下の2点が挙げられます。
- 経費明細表
- 資金調達方法
今後、別の記事でそれぞれの記載内容や注意点について、詳しく解説していく予定です。
まとめ
小規模事業者持続化補助金の申請では、要件に沿いつつ、販路開拓と業務効率化など制度の目的も考慮した事業計画を策定して申請することが重要です。 また、他の補助金と比較すると申請の要件が厳しくはないので、採択に向けては、任意加点項目の取得や本稿で紹介した必要書類をきっちり揃えることも重要です。 筆者は、銀行および投資銀行での勤務経験を持つ行政書士として、一貫性のある財務データに裏付けられたストーリー性のある事業計画の作成を得意としています。
また、当事務所では、当事務代表と同様に知識と経験が豊富な提携先の行政書士と共同で、単独受任時と変わらない報酬体系での支援も行っています(なないろバックオフィス)。 小規模事業者持続化補助金の支援実績も豊富です。
とくに「初めてで不安」、「申請書をうまく作れない」と感じている方は、お気軽にご相談ください。 LINE・フォーム・お電話から、初回無料でご相談いただけます。安心・確実な申請をご支援いたします。
提携先:行政書士藤原七海事務所
参考法令・資料
- 小規模事業者持続化補助金<一般型> 第18回公募 公募要領(第3版)
- 小規模事業者持続化補助金<一般型>申請システム操作手引き
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行政書士
基本情報技術者
J.S.A. ワインエキスパート
古森洋平 Yohei Komori
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