新事業進出補助金(第1回)採択結果を徹底解説 ― 採択率37.2% - 傾向と業種別の申請のポイント

【2025年10月10日作成】

「新事業進出補助金」第1回公募の採択結果が公表されました。本稿では、事務局公表資料に基づき、採択の傾向(業種・地域・申請規模の分布)と、次回申請に向けてのポイントを、銀行出身の行政書士の視点から整理して解説します。

本稿の数値・データは第1回公募の公表資料に準拠しますが、将来の公募回での傾向を保証するものではありません。最新回の募集方針や注意事項は、最新の公募要領にてご確認頂くか、当事務にご相談ください。

新事業進出補助金(第1回)採択結果を徹底解説 ― 採択率37.2% - 傾向と次回申請のポイント

新事業進出補助金の採択率と業種別の採択率

第1回公募の採択率は約37.2%(応募3,006件/採択1,118件)でして。業種別で採択率が最も高いのは製造業で51.9%、一方で最も採択率が低い業種は宿泊業・飲食サービス業で、24.4%でした。

新事業進出補助金は、「事業者にとって新製品(又は新サービス)を新規顧客に提供する新たな挑戦であること」であることが必須で、他の補助金より要件が厳しめです。一般に、製造業は、他の業種よりも、新製品開発と新規顧客開拓の事業展開がしやすく、この要件を満たしやすいことが背景にあると推測されます。

新事業進出補助金(2025年第1回公募)の採択率と業種別採択率
業種応募件数採択件数採択率
製造業61732051.9%
卸売業・小売業45816636.2%
建設業43315836.5%
宿泊業・飲食サービス業3167724.4%
情報通信業2257131.6%
学術研究、専門・技術サービス業1936634.2%
サービス業(他に分類されないもの)1836535.5%
不動産業、物品賃貸業1604125.6%
生活関連サービス業、娯楽業1384532.6%
その他28310938.5%
出典:事務局公表資料(N=3,006)。採択率は応募・採択件数から当方算出。

新事業進出補助金の申請額の分布と採択率

新事業進出補助金の申請額レンジ別では、応募は2,000万以上~2,500万未満が最も多く763件(採択283件、採択率37.1%)。次いで1,000万以上~1,500万未満510件、500万以上~1,000万未満411件、1,500万以上~2,000万未満397件が続きます(0以上~500万未満は該当なし)。

採択率は、サンプル数が少ないですが、3,000万以上~3,500万未満が51.6%で最も高く、5,000万以上は50.7%、4,000万以上~4,500万未満は50.0%(サンプル数は少ない)、3,500万以上~4000万未満は43.0%、2,500万以上~3,000万未満の採択率は40.6%と、高額帯ほど相対的に採択率が高い傾向が見られます。 一方、500万以上~1,000万未満の採択率は28.5%、1,000万以上~1,500万未満は30.2%など、低額帯の採択率はやや低めです。全体の採択率は37.2%です。

新事業進出補助金(2025年第1回公募)の申請額の分布と採択率
申請額レンジ応募件数採択件数採択率
0以上~500万未満00—(該当なし)
500万以上~1000万未満41111728.5%
1000万以上~1500万未満51015430.2%
1500万以上~2000万未満39714837.3%
2000万以上~2500万未満76328337.1%
2500万以上~3000万未満29812140.6%
3000万以上~3500万未満623251.6%
3500万以上~4000万未満26311343.0%
4000万以上~4500万未満18950.0%
4500万以上~5000万未満753546.7%
5000万以上20910650.7%
合計3,0061,11837.2%
出典:事務局公表資料(N=3,006)。採択率は応募・採択件数から当方算出。

業種別の主な採択事例と採択に向けたポイント

下記は新事業進出補助金(第1回公募)の採択事例のうち、応募件数の多い上位5つの業種の主なものです。いずれも新事業進出補助金の要件となっている“新市場・高付加価値への果断な進出”と“生産性向上を通じた賃上げ”という要件をクリアした事業です。 業種は、申請者の現在の業種ですので、進出した事業は元の事業とは異業種のこともあります。 以下、事例とあわせて、業種ごとのポイントも整理しております。

製造業

下記の採択事例は、いずれも、製品等の新規性(既存品の単純増産や小改良ではない)と市場の新規性(従来と異なる顧客層・用途に踏み込む)を同時に満たしやすいテーマです。新事業進出要件は、①製品等の新規性、②市場の新規性、③新事業売上高(または付加価値)比率の達成という三点で判定されます。また、製造業では、既存の強みや知財を核に、用途や顧客層を明確に切り替えることで新市場性を確保しつつ、品質・歩留まり・生産能力の指標で高付加価値化の根拠を示すことが重要です。単なる設備更新ではなく、量産化プロセスや検証計画、外部認証の取得ロードマップまでを一体で設計し、価格×数量×粗利率の改善が賃上げ計画と整合することを数字で説明することが重要です。技術の独自性と代替困難性(知財・ノウハウ・体制)を記述できると審査上の説得力が高まります。

主な採択事例

  • 混迷する自動車業界から高性能医療機器へ、ビジネスモデルの転換
  • 製造業の検査革新へ挑む高精度・高密度CT画像解析ラボ事業
  • 革新的なPC橋非破壊検査装置開発による社会インフラの長寿命化
  • 社会変化に順応した高付加価値オーダーメイド家具製造
  • 真空技術を活かした、透明度の高いクラフトビールの製造事業
  • 産業用ドローン向けコア部品事業への進出
  • 絹織物を活かした工場初・体験型衣料直販事業
  • 製本業で培った経験を活かし化粧品等充填・包装・出荷の一貫製造
  • 自社特許技術を活かしEV向け次世代駆動ユニット部品を量産化

卸売業・小売業

卸小売では、既存の調達・販売チャネルを活かし、上流(加工・製造)や下流(サービス・保守・体験)へ垂直展開することで新規性を担保します。単なる品揃え拡張は新市場性として弱いため、顧客ペルソナの刷新や付加価値提案の転換(例:HACCP対応、認証整備、体験付加など)を明確にします。収益モデルは最重要の指標である付加価値額の向上に結び付くよう、客単価やLTV等の指標で定量的に裏付けます。地域仕入れ・雇用・周遊効果まで含めて政策的意義も記述すると評価が高まりそうです。

主な採択事例

  • 中古タイヤの整備・卸売業を活かした、中古車販売事業への進出!
  • 瀬戸内の離島に暮らすように滞在する、インバウンド向け宿泊施設
  • 卸売業から水産加工業へ!HACCP対応試作・開発拠点の構築
  • バイク業界の活性化と関係人口の創出を実現する温浴事業への参入
  • EV対応型認証整備工場の新設による収益力強化事業
  • 企画デザイン事業を行うためのデザインセンター新設事業
  • お米屋の挑戦!冷凍おにぎり・おこわの製造・販売事業への進出
  • 古民家を活用した農家レストラン事業および米粉パンの製造販売

建設業

建設分野では、事業の新規性を大前提に、社会インフラの維持・更新、環境配慮といった公的性の高いテーマを設定することで、政策的意義(低炭素・重要技術・新ビジネスモデル)への適合も高く、市場規模・継続性の観点でも説明がしやすくなります。継続的な需要と市場規模、施工体制や安全・品質管理体制、行政手続や認証の見通し、協力会社との分担までを時系列で整えれば、実現可能性と政策的意義の両面で強みになります。

主な採択事例

  • 信頼できるリフォーム業者紹介プラットフォーム構築事業
  • ものづくりへの挑戦!食品加工装置の一貫生産体制構築事業
  • 土工事の専門性を活かした大深度地下開発工事分野への新事業進出
  • 半永久的人工地盤の構築による住宅の地盤改良事業
  • 古民家再生×自然体験の新感覚宿泊施設事業
  • 特許取得ベルリプレイス工法による水道管老朽化問題の解決
  • 高精度モーターグレーダー導入による環境配慮型舗装事業
  • 訪日家族向け一棟貸し旅館の新築開業

情報通信業

情報通信では、先端デジタルの活用による生産性向上や人手不足対策などのテーマで、新規性のある事業とストーリーを構築することがポイントです。顧客課題の具体性と、競合比較による差別化ポイント(精度、UI/UX、運用負荷、導入コスト等)を定量的に示します。実証計画、スケール戦略、サポート体制と人材育成の計画まで書き切ることで、審査の「市場性・実現可能性」を満たしやすくなります。

主な採択事例

  • AI行動解析による建設向け安全教育VRシステム開発事業
  • ビデオ通話が可能な革新的コールセンター向けシステムの新事業
  • AI解析技術を活用した関節リウマチ向けWeb問診システム
  • 働き方に制約がある人の活躍機会をつくる派遣・組織コンサル事業
  • 「コンパクトウエディング」に特化した隠れ家リゾートの運営

宿泊業・飲食サービス業

宿泊・飲食では、新規性を大前提に、製法や品質指標、体験価値、ブランド設計を通じて平均的な単価を上回る単価を実現する事業計画が求められます。インバウンドや地域資源の活用は政策的意義として有効ですが、客層の定義、稼働率・客単価・回転率の前提、直販比率やリピートの仕組みまで落とし込み、付加価値額の向上を示すことが重要です。醸造やセントラルキッチン等の設備投資は、試作〜認証〜初期販売〜黒字化までの工程(実現可能性)も大切なポイントです。

主な採択事例

  • 鎌倉市における自社ブランドのクラフトビールブルワリー開設
  • 強みを活かした業務用ラーメンスープ及び飲むプリン製造への展開
  • インバウンドに特化した、体験型焼鳥ダイニングの新規出店
  • 宮崎の味を再興!飲食経営を生かした冷凍うどんの製造販売事業
  • 四日市初のクラフトビール醸造による地域活性化事業

新事業進出補助金の要件・対象経費・スケジュールについては、下記の私の記事で詳しく解説しています。

2025年 新事業進出補助金(第2回公募) - 申請の要件、対象経費、スケジュール

まとめ

新事業進出補助金の申請では、要件に沿いつつ、補助金の制度の目的も考慮した事業計画を策定することが重要です。 筆者は、銀行および投資銀行での勤務経験を持つ行政書士として、一貫性のある財務データに裏付けられたストーリー性のある事業計画の作成を得意としています。

また、当事務所では、当事務代表と同様に知識と経験が豊富な提携先の行政書士と共同で、単独受任時と変わらない報酬体系での支援も行っています(なないろバックオフィス)。 新事業進出補助金を始めとする様々な補助金の支援実績も豊富です。

とくに「初めてで不安」、「申請書をうまく作れない」と感じている方は、お気軽にご相談ください。 LINE・フォーム・お電話から、初回無料でご相談いただけます。安心・確実な申請をご支援いたします。

提携先:行政書士藤原七海事務所

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Yohei Komori

行政書士
基本情報技術者
J.S.A. ワインエキスパート
古森洋平 Yohei Komori

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参考法令・資料

  1. 独立行政法人中小企業基盤整備機構 中小企業新事業進出補助金サイト
  2. 中小企業新事業進出補助金 公募要領(第2回公募)
  3. 中小企業庁「新事業進出指針」- 令和7年4月22日