米国LLCの定款(Articles of Organization)翻訳のポイント【行政書士による安心の定款翻訳】
【2025年12月7日作成】
米国に法人を設立している日本人や日本企業の経営者から、「アメリカの定款ってどこまで読めばいいの?」「相続で翻訳が必要になるのはどんなとき?」というご相談をいただくことがあります。 特に、LLCの定款(Articles of Organization)は日本の定款と形式や内容が異なるため、戸惑う方が多いのが現状です。本記事では、定款の基礎知識や相続時の注意点、翻訳のタイミング・進め方について、証明書翻訳の経験が豊富な行政書士の視点からわかりやすく解説します。

目次
1. はじめに|米国LLCの定款と相続・翻訳の関係
「家族がアメリカにLLCを持っているが、相続が発生したときにどうすればよいのか分からない」というお問い合わせを頂くことがあります。
相続税の申告や遺産分割の協議では、相続対象となる資産を確定し、権利関係を明確にすることが不可欠です。LLCの出資比率や持分譲渡に関する条項が理解できなければ、誰がどれだけの権利を持っているのか判断することができません。 そのため、定款(Articles of Organization)を日本語に翻訳しておくことは、相続や事業承継の場面で非常に重要なステップとなります。
2. 「Articles of Organization」とはどんな書類?
アメリカの有限責任会社(LLC)を設立するときに必ず提出する書類が「Articles of Organization」です。日本語では「定款」や「基本定款」と訳されることが多く、登記を所管する州の法務局に提出し、
- 会社名
- 所在地
- 事業目的
- 出資者(メンバー)の情報や出資比率
など、法人の基本情報を公的に登録する役割を担っています。株式会社の場合は「Articles of Incorporation」という名称になりますが、LLCの場合は「Articles of Organization」と呼ばれるのが一般的です。
日本の定款との大きな違いは、情報量と構成です。日本の定款は会社の運営に関する詳細なルールまで記載するのに対し、アメリカでは運営の詳細を別契約(Operating Agreementなど)で定めることもあり、定款そのものは比較的シンプルです。 このため、LLCの定款を翻訳しただけでは会社の全貌が見えてこないこともありますが、相続や契約の際には必須の書類であることに変わりはありません。

3. 相続で定款の翻訳が必要になる場面
相続税の申告や遺産分割協議では、相続対象となる資産を明確にする必要があります。LLCの持分も、当然ながら相続財産の一部となり得ます。 特に、次のような場面では、英文のままではなく日本語訳を準備することが求められます。
- 相続税申告書に添付し、定款の内容を税務署に説明したいとき
- 遺言書や家族間の話し合いで、出資比率を確認しながら分配割合を決めたいとき
- 米国内でメンバー変更の登録手続きをする際に、英文と日本語の両方を参照したいとき
- 海外資産を含む家族信託や贈与契約書を作成する際に、専門家と内容を共有したいとき
相続人の中には英語に不慣れな方も多くいらっしゃいます。日本語訳があれば、書類の意味を正確に理解し、家族全員が納得した上で手続きを進められる点が大きなメリットです。 また、日本語訳は裁判所や税務署に提出する際にも読みやすい資料として機能し、手続き全体のスムーズさにも貢献します。
4. Articles of Organizationに記載されている主な項目
Articles of Organizationには、概ね次のような項目が含まれます。
- 法人名称(Legal Name):会社の正式名称です。同一州内で同じ名称は登録できません。
- 主たる事務所の所在地(Principal Office):会社が主に活動する場所の住所を記載します。
- 登録代理人(Registered Agent):州政府からの通知を受け取る代理人または会社。個人や専門サービス会社が記載されます。
- 事業目的(Purpose):会社が何を目的として設立されるかを記載します。一般的な商取引全般を許可する文章が使われることも多いです。
- メンバー情報(Members):出資者の名前や住所、出資比率などを記載します(州によっては公開されない場合もあります)。
- 経営形態(Management Structure):メンバーが直接経営を行うか、マネージャーを置くかといった管理構造を明記します。
こうした項目は簡潔に記載されていることが多い一方で、州ごとに表現や用語が異なる点に注意が必要です。 当事務所で翻訳の際には、「member」や「manager」などの単語を 日米の会社法の相違も意識しながら、読み手が誤解しないよう訳しております。
5. 定款翻訳のタイミングと進め方
5-1. 手元の書類を整理する
まずは、手元にある定款(Articles of Organization)やOperating Agreementなどの関連書類を整理します。PDFや紙のコピーをスキャンしたデータでも構いません。
5-2. 翻訳範囲・納期・費用の見積もり
信頼できる専門家や翻訳者に相談し、翻訳範囲・納期・費用の見積もりを出してもらいます。Operating Agreementまで含めるのか、定款のみで足りるのか、といった優先順位もこの段階で整理します。
5-3. 不明点の確認とコミュニケーション
原文中に不明な表現や固有の州制度がある場合、翻訳者から質問が来ることがあります。早めに回答することで、訳文の品質が向上します。
5-4. 翻訳内容のチェック
翻訳が完成したら、依頼者側でも確認しましょう。特に、
- 数字の誤記
- 名前の綴り
- 州名・日付・出資比率の記載
など、細かなチェックが重要です。不明点があれば、遠慮なく翻訳者に確認しましょう。
5-5. 翻訳証明書・公証の準備
必要に応じて、翻訳証明書の発行や公証を行います。相続手続きでは翻訳証明書が求められることもあるため、税理士・弁護士などの専門家に事前に確認しておくと安心です。なないろバックオフィスでも行政書士名義での翻訳証明書を発行しております。
6. 翻訳のポイントとよくある落とし穴
定款の翻訳では、ちょっとした言葉の違いが大きな誤解につながることがあります。代表的なポイントをいくつかご紹介します。
6-1. 用語の誤訳に注意
たとえば、“interest” は日常的には「利益」「関心」と訳されることが多い単語ですが、定款の文脈では「持分」を意味します。これを「利息」と誤訳してしまうと、内容が全く異なってしまいます。 また、“Capital Contributions” を単に「資本」と訳すと、出資額と資本金の概念が混同されるおそれがあります。文脈に応じて「出資金」「払込資本」など、より適切な訳語を選ぶ工夫が必要です。
6-2. 州制度(Series LLCなど)への配慮
州法に特有の制度も要注意です。たとえば“Series LLC”という仕組みを採用している州では、1つのLLCの中に複数の「系列」を持たせ、それぞれの資産と責任を分けることができます。 この制度を踏まえずに単に「会社」と訳してしまうと、読み手が単一の法人と誤解してしまう可能性があります。州法の背景を理解しながら表現を選ぶことが重要です。
6-3. 日本の読み手への分かりやすさ
定款の翻訳は、単語の置き換えだけでなく、日本の実務でどう理解されるかを意識することが大切です。必要に応じて、脚注や補足説明を加えることで、相続人や日本側の専門家にとっても読みやすい資料になります。
7. 行政書士など専門家に依頼するメリット
定款の翻訳は、ご自身で行うことも不可能ではありませんが、法律用語や州法の違いに不安がある場合は、行政書士や弁護士などの専門家に依頼するメリットが大きくなります。
7-1. 法的な解釈を含めた説明が受けられる
行政書士は、補助金申請や許認可手続きを日々扱っており、法律用語と実務の橋渡しをすることを得意としています。定款の翻訳を依頼すると、単なる文字の置き換えだけでなく、相続や税務申告に耐え得るレベルでの訳文と併せて、要点の説明を受けることができます。
7-2. 翻訳証明書や公証までワンストップでサポート
専門家に依頼することで、定款そのものの翻訳に加え、翻訳証明書(Certificate of Translation)や必要に応じた公証手続きまでまとめて相談できます。
- 相続や税務申告に耐え得る翻訳の提供
- 原文内容を確認しながら注釈・解説を追加
- 翻訳証明書・公証に関する実務サポート
- 相続全体の流れや米国側の手続きについての相談
7-3. 守秘義務による安心感
定款には、氏名や住所、出資比率などのセンシティブな情報が含まれます。行政書士は法律上の守秘義務を負っており、職務上知り得た情報を第三者に漏らしてはならないと定められています。個人情報の観点からも、安心して翻訳を任せられる点は大きなメリットです。
8. 翻訳に必要な書類・情報と費用・期間の目安
8-1. 翻訳に必要な書類・情報
翻訳を依頼する際には、定款そのものに加えて、次のような資料を一緒に用意しておくとスムーズです。
- Operating Agreement(運営協定):出資者間の取り決めや議決方法が記載されていることが多い重要書類です。
- メンバーシップ証明書:持ち分証明として発行される場合があります。
- 年度報告書(Annual Report):毎年州に提出する報告書で、事業内容や連絡先が更新されます。
- 州ごとの法人番号や登録番号:翻訳者が該当する州法を調べる際に役立ちます。
情報が不足していると、翻訳者が推測に頼らざるを得ず、正確性が下がるリスクがあります。できる限り原本に近い形で資料を提供しましょう。
8-2. 費用と期間の目安
費用や納期は翻訳者や文書の量によって異なりますが、数ページ程度の定款であれば通常3営業日程度が目安です。
Operating Agreementを含めると数十ページになることもあり、その場合は2週間程度かかるケースもあります。費用はページ数や専門性の高さに応じて変動し、翻訳証明書や公証が必要な場合は別途費用が発生するため、事前に見積もりをとっておくと安心です。
9. よくある質問
Q1. どの時点で翻訳を準備するべきですか?
→ 結論としては、早めに準備しておくほど安心です。相続開始後は税務申告や書類収集で忙しくなり、翻訳に十分な時間を割けないことが多くなります。遺言や贈与を計画するタイミングで、定款の翻訳も一緒に進めておくと、家族の負担を大きく軽減できます。
Q2. Operating Agreementも翻訳する必要がありますか?
→ 多くの場合、Operating Agreementの内容も重要です。会社の運営や利益配分のルールがそこに記載されていることが多く、定款だけでは全体像が見えないケースもあります。相続や事業承継の検討にあたっては、定款と併せてOperating Agreementも翻訳しておくことで、より正確な判断がしやすくなります。
Q3. 翻訳文に誤りがあったらどうなりますか?
→ 税務署や裁判所に提出する資料に誤訳が含まれていると、手続きのやり直しや税額計算の誤りにつながる可能性があります。特に出資比率や金額・日付など、数字に関する誤りは影響が大きくなります。信頼できる翻訳者・専門家を選ぶことがとても大切です。
Q4. 自分で翻訳したものをチェックしてもらうことはできますか?
→ はい、可能です。ご自身で作成されたドラフトをベースに、表現の修正・用語の統一・注釈の追加などを行い、そのうえで翻訳証明書を付けて納品する形も考えられます。
Q5. PDFやスマホ写真の状態でも依頼できますか?
→ 判読できる画質であれば、PDFやスマホ写真からでも翻訳は可能です。ただし、提出先によっては「原本」や「原本のコピー」の提出を求められる場合がありますので、 翻訳用とは別に原本の保管は必ず行ってください。
10. まとめ
米国LLCの定款(Articles of Organization)は、日本の会社の定款とは形式も役割も異なりますが、相続・遺言・贈与・企業買収など、人生や事業の大きな節目で重要な資料となる点は共通しています。
本記事では、定款の概要と相続で翻訳が必要になる理由、翻訳の手順と注意点、専門家に依頼するメリットなどを行政書士の視点からご説明しました。
もしご自身やご家族が米国に法人をお持ちでしたら、一度専門家に相談してみることをおすすめします。「どこから手を付ければよいか分からない」という段階からでも構いません。小さな一歩が、将来の大きな安心につながります。
なないろバックオフィスは、申請実務経験が豊富な行政書士に加え、 米国の大学院卒で翻訳実務の経験が豊富な行政書士(TOEIC925点)が在籍。行政書士2名体制で全ての翻訳を監修、画像データから全国どこからでもご依頼いただけます。正確で読みやすい翻訳・要件を満たす翻訳証明書・守秘義務による情報管理の安心を同時に確保することができ、書類準備の負担やストレスを大幅に軽減できます。
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