「経営力向上計画」のA類型、税制優遇を最短で活用する方法|銀行出身の行政書士が解説
【2025年7月27日作成】
中小企業が自社の経営力を高める取り組みの一つとして、「経営力向上計画」の活用が進んでいます。 なかでもA類型(生産性向上設備)は、制度の中でも比較的利用しやすく、要件や手続きも明確に整理されています。 この計画に基づいて認定を受けることで、税制優遇や金融支援などの支援措置を利用することが可能になります。 特に、生産性の高い設備への投資に対しては、法人税の即時償却や税額控除といった特典が用意されています。 本稿では、A類型を前提に、銀行および投資銀行での勤務経験を有する行政書士・古森(こもり)が、申請要件や手続きのポイントを実務的な観点からわかりやすく解説します。 なお、当事務所と提携先の行政書士藤原七海事務所(あわせて、なないろバックオフィス)では、補助金の支援実績が多数ございます。

経営力向上計画(A類型)の認定を受けるメリット
①税制優遇措置
A類型の対象設備(生産性が年平均1%以上向上するもの)を計画に基づいて取得した場合、以下の税制優遇を受けることができます。
- 法人税の即時償却または
- 税額控除(最大10%)※資本金3,000万円超の法人は7%)
対象となるのは、機械装置、工具、器具備品、建物附属設備、ソフトウェアで、以下の要件を満たす必要があります。
- 設備ごとに定められた最低取得価額を上回っていること
例:機械装置の場合は160万円以上、ソフトウェアの場合は70万円以上 - 販売開始時期の要件(例:機械装置は10年以内に販売開始されたモデル)を満たしていること
- 生産性向上指標(単位時間当たり生産量、歩留まり率、投入コスト削減率)のいずれかが年平均1%以上向上していること
これらの条件を確認のうえ、工業会の発行する証明書の取得が必須です。建物や建物附属設備も、一定の雇用条件等を満たせば、特別償却または税額控除の対象になります。
② 補助金申請時の加点
「経営力向上計画」の認定を受けていると、小規模事業者持続化補助金の申請において、加点評価の対象となります。
経営力向上計画(A類型)のスケジュール
経営力向上計画(A類型)では、申請の前に「工業会の証明書」を取得する必要があります。 この証明書は、導入予定の機械や設備が「一定の性能を満たしていること」を証明するものです。 証明書は、自社ではなく設備メーカーなどを通じて取得するのが一般的です。 証明書が手に入ったら、次に業種ごとに決められた「主務大臣」(たとえば、製造業なら経済産業大臣)に申請を出し、計画の認定を受ける流れとなります。

準備から計画の認定まで最短で2か月程度、通常は3ヶ月程度かかります(不備がない場合)。
ステップ | 内容 | 所要期間の目安 | 標準処理期間(公式) | 補足 |
---|---|---|---|---|
① 証明書発行依頼 | 設備ユーザーがメーカーに依頼 | ― | ― | 対象設備の型式確認等も含む |
② 証明書申請・取得 | メーカー → 工業会へ申請 → ユーザーが受領 | 約3~4週間 | 約15営業日 | 混雑時や不備ありの場合は延長あり |
③ 経営力向上計画の作成 | 事業計画ほか申請書類を作成する | 約3~4週間 | ― | ― |
④ 経営力向上計画の申請・認定 | ユーザーが主務大臣へ申請し、認定を受ける | 約2~4週間 | 原則30日以内 | 電子申請なら短縮されることも |
⑤ 計画期間の設定 | 3年・4年・5年のいずれかを選択 | 申請時に設定 | ― | 設備取得・取組実施はこの期間内に実施 |
⑥ 設備取得 | 認定後に購入・導入 | 計画期間内で自由 | ― | ※認定前取得は税制対象外 |
⑦ 税務申告 | 決算時に税務署へ申告 | 決算期に実施 | ― | 認定書・証明書・申請書の写しを添付 |
経営力向上計画(A類型)の対象となる設備と要件
対象設備の種類・価格・販売開始時期
A類型では、「生産性が年平均1%以上向上する設備」を取得した場合、税制優遇(即時償却または税額控除)の対象となります。対象設備と最低取得価額、販売開始時期の要件は以下のとおりです:
設備の種類 | 用途の例 | 最低取得価額 | 販売開始時期の要件 |
---|---|---|---|
機械装置 | 製造設備全般 | 160万円以上 | 過去10年以内に販売開始 |
測定工具・検査工具 | 精密測定機器など | 30万円以上 | 過去5年以内に販売開始 |
器具備品 | 作業机、什器、厨房機器など | 30万円以上 | 過去6年以内に販売開始 |
建物附属設備 | 空調設備、給排水設備など | 60万円以上 | 過去14年以内に販売開始 |
ソフトウェア | 設備の稼働状況を収集・分析・指示できるもの | 70万円以上 | 過去5年以内に販売開始 |
生産性向上指標の具体例
対象設備は、以下のいずれかの指標において、「年平均1%以上の改善」が求められます:
- 単位時間当たりの生産量の増加(例:1時間あたりの加工数が増える)
- 歩留まり率の改善(例:良品率の向上、原材料の無駄削減)
- 投入コストの削減(例:作業時間の短縮、エネルギー効率の改善)
工業会証明書
これらの生産性向上要件を満たすことを第三者的に証明するために、「工業会証明書」の取得が必須です。 設備メーカーを通じて、所定の様式により工業会に申請し、発行された証明書を経営力向上計画の申請時に添付する必要があります。
証明書の日付は、計画申請前でなければならず、設備の取得前に必ず取得しておく必要があります。
経営力向上計画
「経営力向上計画」で策定する事業計画は、文字通り「経営力向上計画」と呼ばれます。 経営力向上計画では、単に設備を導入するだけでなく、その設備を活用してどのように経営力を高めるかを明確に示す必要があります。A類型の場合も、形式上は比較的簡素ですが、以下の4つの要素を押さえて記載することが求められます。
1.現状認識
申請の第一歩として、自社の置かれている状況を多面的に把握・整理することが求められます。
- 事業の概要・業種分類: 業種、提供サービス、事業規模等の基本情報や、事業分野別指針に基づく自社の区分を明記します。
- 顧客・市場・強み・弱み: 顧客数、主力取引先、市場規模、競合、自社の強みや課題などを記載します。
- 財務状況: ローカルベンチマーク等を使い、収益性・安全性・成長性の観点から経営を分析します。
- 経営課題の整理: 上記①~③を踏まえ、改善すべき経営課題を明確化します。
2.経営力向上の目標
計画期間(3年・4年・5年)を設定し、「労働生産性」などの数値目標を定めます。
- A 現状値: 直近の決算期の実績値
- B 計画終了時の目標値: 数値で示す目標(正の値)
3.経営力向上の内容(取組)
経営課題を改善するための具体的施策を示します。
- 既存資源を活用した業務改善や人員の再配置
- 事業承継で得た資源(顧客・技術など)の活用
- 設備投資・新事業・業務改善の具体策とそのスケジュール
4.資金計画と財務要件
計画実行のための必要資金や財務条件を記載し、実現可能性を裏付けます。
- 資金の額と使途: 設備、人材育成、IT投資などの内訳
- 調達方法: 自己資金、融資、補助金、リースなど
- 財務条件: 純資産が正、EBITDA有利子負債倍率が10倍以内(税制支援を受ける場合)
まとめ
経営力向上計画の申請では、要件に沿いつつ、生産性向上など制度の目的も考慮した事業計画を策定して申請することが重要です。 筆者は、銀行および投資銀行での勤務経験を持つ行政書士として、一貫性のある財務データに裏付けられたストーリー性のある事業計画の作成を得意としています。
また、当事務所では、当事務代表と同様に知識と経験が豊富な提携先の行政書士と共同で、単独受任時と変わらない報酬体系での支援も行っています(なないろバックオフィス)。 経営力向上計画、ものづくり補助金、小規模事業者持続化補助金など、様々な補助金の支援実績が豊富です。
とくに「初めてで不安」、「申請書をうまく作れない」と感じている方は、お気軽にご相談ください。 LINE・フォーム・お電話から、初回無料でご相談いただけます。安心・確実な申請をご支援いたします。
提携先:行政書士藤原七海事務所
参考法令・資料
- 中小企業庁 - 中小企業等経営強化法に基づく支援措置活用の手引き
- 中小企業庁 - 経営力向上計画策定の手引き
- 中小企業等経営強化法における経営力向上設備等に関する税制措置 に係る工業会証明書の取得の手引き
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