2025年(第9回) 躍進的な事業推進のための設備投資支援事業(東京都の助成金) - 銀行出身の行政書士が解説!

2025年4月7日に、東京都より「躍進的な事業推進のための設備投資支援事業」の概要が発表されました。 「躍進的な事業推進のための設備投資支援事業」は、都内中小企業者が 「製品・サービスの質的向上」による競争力強化や「生産能力の拡大」のための生産性向上を進める際に必要となる、 機械設備等の導入経費の一部を助成するものです。新規の事業でない事業であっても採択される可能性がある点がポイントです。 本稿では、銀行への勤務経験もある行政書士が、「躍進的な事業推進のための設備投資支援事業」の申請の要件、対象経費、スケジュールについて解説いたします。
なお、一般に「助成金」とは、厚生労働省に対して申請するものですが、東京都の場合、一般に「補助金」に分類されるものを「助成金」と呼んでいます。本稿では併記します。

2025年(第9回)躍進的な事業推進のための設備投資支援事業 - 申請の要件、対象経費、スケジュールを行政書士が解説

(第9回)躍進的な事業推進のための設備投資支援事業支援対象事業のスケジュール

2025年(第9回)の補助事業(助成事業)開始までのスケジュールは次の通りです。 4月30日から5月13日までが申請書類の提出期間ですが、申請のためには事前の「申請の予約」が必須です。 「申請の予約」は4月23日から5月8日までの間に実施します。審査が、一次の書類審査と二次の面接審査に分かれている点もこの補助金(助成金)の特徴です。

躍進的な事業推進のための設備投資支援事業のスケジュール

補助事業(助成事業)の実施期間は、上記では開始時点しか記載がありませんが、2025年10月1日から2027年3月31日までの1年半です。 また、どの補助金であっても、採択後に補助事業実施期間が設けられており、この期間に事業者が自己資金又は借入で投資を実施します。補助金は、事業の実施完了報告を終えてから一定の期間を経過後に初めて支払われます。 「躍進的な事業推進のための設備投資支援事業支援対象事業」の場合は、この期間は2ヶ月です。 補助金(助成金)の交付を受けた後は、5年間報告(事業化状況報告書)を実施します。補助金は3年から5年の間で事業経過の期間(報告期間)を任意に選べるものが多いですが、 本補助金の場合、この期間は5年に限定されています。なお、申請には、「GビズIDプライムアカウント」の取得が必要です。

補助率と補助上限額

下記が補助率(助成率)と補助額(助成額)です。 最も使いやすい競争力強化枠の場合は、追加のゼロエミッション要件と賃上げ要件を加えない場合、 中小企業なら1/2の補助率(助成率)、小規模事業者なら2/3の補助率(助成率)です。 補助額は最低金額が100万円、最高金額は1億円とかなり幅があるのも特徴です。

事業区分類型要件助成率助成額
ゼロエミ※2賃上げ※3
Ⅰ 競争力強化中小企業者1/2 以内100 万~
1 億円
※1
2/3 以内
3/4 以内
小規模企業者2/3 以内
3/4 以内
4/5 以内
働き方改革推進4/5 以内
Ⅱ DX推進2/3 以内
Ⅲ イノベーション3/4 以内
Ⅳ 後継者チャレンジ3/4 以内
Ⅴ アップグレード促進3/4 以内1~2 億円

※1 区分Ⅰの小規模企業者でゼロエミ要件・賃上げ要件ともに適用なしの場合、助成限度額は3,000万円

※2 ゼロエミッション要件:省エネ効果が高い取組について、内容に応じて助成率を拡充

※3 賃上げ要件:一定の賃上げを実施する場合は助成率を拡充

申請資格要件

本補助金(本助成金)の申請資格要件は、大企業の支配を受けない中小企業(資本金・従業員数が業種ごとの基準以内)で、都内に本店等があり2年以上事業を継続している事業者です。 都税の滞納がなく、同一設備で他の公的助成を受けていないこと、過去5年間に助成事業で不正事故がないこと、法令順守と必要な許認可の取得、暴力団関係や風俗・ギャンブルなど社会通念上不適切な事業でないことも必須条件です。 申請は一企業一案件のみで、採択後も助成期間終了まで要件を維持しなければ助成が打ち切られます。

実質的な要件 - 競争力強化

「競争力強化」の要件は、公募要領では次のように定義されています。 この定義からも分かる通り、補助率(助成率)が高いゼロエミッション要件と賃上げ要件を満たすことは任意であり、 これらを満たさない場合(=原則通りの補助率でいい場合)は、付加価値額を3%以上上げる事業計画でなくてもいいことになります。

(競争力強化)競争力強化及び生産性向上のために必要となる機械設備等を新たに導入する事業であり、 ゼロエミッションへの取組み及び一定の賃上げを実施する場合は、設備投資後、従業員一人当たりの付加価値額(=「労働生産性」)を年率3%以上向上する計画である事業。

第9回 躍進的な事業推進のための設備投資支援事業 募集要項

下記は、公募要領に記載されている「競争力強化」に該当する事業の例です。 下記の事業例以外でも、補助事業者(助成事業者)の競争力強化につながる事業計画であれば対象になるとされています。 事業の新規性を求められない点が確認できます。

  1. ・ 量産体制の構築
  2. ・ 安定供給体制の確立
  3. ・ 多品種少量生産への対応
  4. ・ 生産工程の改善
  5. ・ 一貫加工の実現
  6. ・ 製品・技術の品質向上、信頼性確保
  7. ・ 特殊素材・難加工・複雑形状への対応
  8. ・ 短納期への対応
  9. ・ コストダウン

補助対象経費(助成対象経費)

対象経費は機械設備と器具備品です。ソフトウェアも対象にはなりますが、主に生産や役務の提供のために使用するものに限定され、かつ、金額は300万円以上1,000万円以下に制限されます。 また、機械設備であれ、器具備品であれ、ソフトウェアであれ、「助成事業者が生産や役務の提供のために直接使用し、かつ必要最小限の経費」であることが求められます。 汎用的な機械設備や、競争力強化への貢献が間接的な影響に留まる設備は対象外となります。

 

事業計画

募集要項に記載されている事業計画に記載する項目は次の通りです。事業計画全体をWord10頁程度に収めることが求められます。

  1. 事業概要: 創業から現在に至るまでの沿革とともに、主な製品・サービスなどの事業の概要
  2. 本助成事業の事業計画: 市場動向及び事業計画立案の背景を踏まえ、本助成事業の計画の概要
  3. 目的との適合性: 選択した事業区分(Ⅰ 競争力強化 / Ⅱ DX推進/ Ⅲ イノベーション/ Ⅳ 後継者チャレ ンジ)と、事業計画の関連
  4. 事業計画の優秀性: 自社の製品・サービス、技術等や競合他社の動向、 及び市場シェアにおける分析を踏まえて事業計画の優秀性について、各視点から具体的に記載
  5. 事業計画の実現性
  6. 事業計画実施後の成長・発展性
  7. 事業計画の妥当性 :機械設備の必要性・妥当性について、導入する機械設備のスペック・規模等からその必要性と妥当性を具体的に記載
  8. 法令上必要な許認可・届出等

まとめ

本補助金(助成金)は、採択率が20%を下回るとされ、さほど高くありません。また、審査が書類と面接の2段階に分かれるなど、要件こそ本稿で紹介したように軽いですが、採択の難易度はかなり高いと補助金と言えます。 筆者は、銀行勤務経験(法人営業)を有する行政書士として、中小企業の皆様の「躍進的な事業推進のための設備投資支援事業支援対象事業」の相談と申請支援に応じています。 加えて当事務所では、中小企業の皆様により上質なサービスを提供すべく 当事務所代表と同様の知識と経験を有する行政書士とともに、単独受任時と変わらない報酬での共同受任にも応じています。 LINE、問い合わせフォーム、または、お電話にてお気軽にお問い合わせ頂ければ幸いです。

提携先:行政書士藤原七海事務所

参考法令・資料

  1. 第9回 躍進的な事業推進のための設備投資支援事業 募集要項
  2. 2025年 中小企業省力化投資補助金チラシ

本稿の筆者

Yohei Komori

行政書士
基本情報技術者
J.S.A. ワインエキスパート
古森洋平 Yohei Komori

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